アジャイルに苦戦する日本企業
しかし、日本の大企業ではこの「アジャイル」の浸透に手を焼いている。我々としても、大手企業を支援させていただく中で様々な事例を聞いているが、それらの多くで「組織」と「文化」という2つの壁が浸透を阻んでいるように感じる。
まずは「組織」の観点から述べていく。アジャイルは高い専門性を持った人材を部門横断的に集め、それぞれのメンバーに主体的に行動してもらう自律型の組織を前提にすることによって、その真価を発揮する。しかし、本業との兼ね合いもあり、リソースを確保することが難しいことも多い。高い専門性を持ったエース級の人材ともなると、本業の所属長も易々と手放したくない。この場合、兼務として参画することが多いが、人事考課としても本業が重視される中、兼業としてのアジャイルチームの活動に打ち込む人は多くない。また、兼務メンバーが多くなると、アジャイルチームへの参加人数も多くなるが、これにより各メンバーへの責任が分散され、主体性が薄れていく。このようにならないために、アジャイル組織の設置や人事評価の見直し等、会社組織全体の設計も必要となる。
続いて、「文化」の観点についても述べていきたい。先ほど「自律型組織」というキーワードを挙げた。そのような組織を構築するには、各メンバーに権限を持たせ、主体的に物事を進めることが必要である。しかし急に権限を与えられても、当人は困惑してしまうことが多い。以下の図を見てほしい。日本の場合、意思決定が階層的であり合意を大事にする。物事を決めるのに多くのステークホルダー、上司にお伺いを立てて意思決定を形成してきた人が、権限を与えられてもどう仕事を進めてよいか分からないのだ。