デジタルトーク

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2019.01.25

銀行・証券 OrigamiPayが生き残るには

QR決済の認知度は一気にあがった

 2018年12月4日に開始されたPayPayの決済金額の20%を還元するという「100億円あげちゃうキャンペーン」は、予定された2019年3月末を待たず、わずか10日間で還元の上限100億円を達成し、大好評のうちに終了した。

 一方で、「利用集中によるサービス停止」「カードを不正利用された」「本人確認ができない」などの決済サービスとしての基本的な性能・セキュリティ面の不十分さによって、キャッシュレスに対する不安拡大、キャンペーン悪用(転売で利益数十万円など)といった課題も浮き彫りになった。「安心・安全」に利用できることは、決済インフラとして当たり前のことであり、これらの課題がキャッシュレス推進の足かせとならないよう早急に対応し、不安を取り除いていかなければならない。

 とはいえ、キャッシュレス化の流れは止まらない。

 PayPayの後を追うように、LINE Pay、d払い、OrigamiPayも大規模キャンペーンに打って出た。ここ数ヶ月の間にQR決済の認知度は一気にあがってきており、良くも悪くも今後しばらくの間、決済の話題の中心となるだろう。

 ところで、先般「キャッシュレス化の推進は地銀を救うか」で、地方の銀行との協業を推進すべきとお伝えしたが、数あるQR決済サービスの中でも、OrigamiPayは信金中央金庫と提携し、地場の信用金庫と共に加盟店開拓を加速させている。

 最近良く耳にするようになったOrigami Payであるが、そもそも何者でどこへ向かおうとしているのか?

信用金庫との提携に動くOrigamiPayの戦略

 LINE Pay・d払い・楽天ペイは、その戦略がわかりやすい。彼らはメッセンジャー・携帯電話・EC等を背景とした顧客基盤をベースに、更なるデータ取得と自社サービス拡充の入口として決済を押さえにきている。

 日本でいち早く2016年5月にスマホQR決済に参入しているOrigami Payであるが、決済以外のビジネスをベースとした顧客基盤を持たない企業であり、その戦略は非常に読みづらいものであった。その戦略の一端が、2018年9月のカンファレンスから垣間見えてきた。

OrigamiPayの歩み

 2018年9月に行われた「Origami Conference 2018」において、3つのキーワードと各施策が発表された。
「ローカル」
・・・信金中央金庫を核に信金と提携し、多種多様な加盟店の開拓(2018年度末 10万店舗を目標)と新サービスの提供を行う。
  • Origamiクーポン(リリース済み)
    …アプリ内だけではなく、店舗にクーポンQRを貼り出すなどすることで、クーポンを取得することができる
  • Origamiウォレット
    …仮想口座をつくることで、Origamiアプリ内での送金を可能とする
  • Origamiトレード
    …資産運用の仕組みを提供する
  • Origamiクレジット
    …与信(スコアリング)と融資を提供する
     
「グローバル」
・・・銀聯と提携し、アジアを始めとした24カ国・750万店舗でOrigamiPayを利用可能にする。一方で、Origamiの加盟店でも銀聯QRを利用可能にする。台湾の「JKOPAY(街口支付)」、中国「ALIPAY」とも提携する。
「オープン」
・・・「提携Pay(Origami Partner Pay)」としてOrigamiPayの機能を開放し、他社アプリにも搭載可能とするSDKを提供する。
 その戦略的意図をCEOの康井氏は、「Origami Payをベースとしてつなげていくことで、BtoCにもCtoCにも使える1つのプラットフォームとなり、これをオープンな仕組みで提供していくこと」と語っている。

 すなわち、あらゆる場面でOrigamiPayが使える環境を準備することで利用を拡大し、そのデータを活用した金融サービスを提供して収益を上げるモデルを想定しているものと思われる。この基本戦略は一見他のQR決済事業者と大きく変わらないようであるが、オープンな仕組みを他の事業者に提供できるという点が、他社との差別化となりうる部分であろう。

認知度向上と資金力に課題

 提携戦略や資本増強により順調に拡大しているように見えるが、課題は多い。

<認知度>
 「QR決済(日経BPムック)」のアンケートによると、QR決済事業者としての認知度は40%程度で第6位である。これは現時点で最後発のAmazonPay、PayPayよりも低い(LINE Pay、楽天ペイの認知度は90%を超える)。利用率も2%程度と、LINE Pay、楽天ペイの10%程度と比較すると5倍の開きがある。

 加盟店数も「2018年度末で10万店舗を目標」であり、LINE PayがJCBとの提携の賜物ではあるものの「100万店舗」を達成したことと比較すると大きく水を開けられている。認知度が低いために、なかなか加盟店網の拡大ができていない様子が見受けられる。

 2019年の早い段階で、セブン-イレブン、au、みずほ銀行等もQR決済に新規参入することを表明しており、認知度を早期に向上させなければ、多くのQR決済事業者の中に埋もれる懸念がある。

<資金力>
 次いで、資金力も問題だ。2018年9月に66.6億円の資金調達を発表したものの、その額はPayPayの還元額100億円にも満たない。

 他社が圧倒的な資金力をベースに様々なキャンペーンで経済圏を拡大してくることを想定すると、開発投資のみならずキャンペーン等でも相当の資金が必要になってくる。厳しい戦いを強いられることが予想される。

加盟店拡大と利用者拡大に注力すべし

 プラットフォーマーとしての地位を確立するには、使い勝手が良い商品・サービスを安価に提供し、ユーザーを増やし続けることでネットワーク効果を働かせることが肝要である。

 Origamiの現状を鑑みると、プラットフォーマーになるためには、認知度の向上と、加盟店・利用者同士で仲間を増やしていく状況を作り上げることに資金を集中させるべきである。ある一定の加盟店網と利用者が確保できた段階で、金融サービスの開発・提供に進んでも遅くはない。

 加盟店拡大に向けては、現在の信金との提携を加速するとともに、商店街といったグループに対してアプローチすることで、「皆がやるならやろうか」と思わせ、効率的に加盟店を獲得できる可能性がある。

 加えてインセンティブとして、加盟店に向けては手数料ゼロ、加盟店開拓の協力者に向けては加盟店開拓数や利用額に応じたキックバック、そして消費者に対しては利用額に応じたキャッシュバックを用意するといった施策が有効と考える。

 更なる利用拡大に向けては、個人間送金を提供し、利用者仲間同士の使い勝手のよい決済手段として活用を促すという流れはどうか。

 LINE Payは個人間送金により利用者同士が仲間を拡大させているが、Origamiも早期に実装し利用者同士のネットワークを作ることに注力してはどうか。また、QR決済以外の手段(ApplePay、GooglePay等)への対応、国際ブランドのプラスチックカード展開で利用できる場所を増やすなど、多種多様の決済手段を実装するといった基本的な対応も有効であると考える。

 ただし、これらの施策を実現するため、相当額の資金を引き続き集め続ける必要があることは言うまでもない。

キャッシュレス戦争後の世界で

 ここ数年のうちに決済プレイヤーは、多くの利用者と加盟店を獲得できた数社に収斂していくであろう。

 現在繰り広げられているキャッシュレス戦争は、手段であり目的ではない。取得したデータを活用した新しいサービスの展開が既に始まっている。

 その先では、それぞれの事業者が独自の経済圏の中でサービスを拡充してくる。そこでは、国や都会・地方といった概念をこえた新しいコミュニティが形成され、消費者は生活のほとんどをその経済圏の中で完結するようなことも起こるであろう。

 Origamiの立ち位置は、提携Payに代表されるように、Origamiを活用する事業者が経済圏を獲得するためのプラットフォームであるという特徴がある。Origamiを活用する各事業者をシームレスにつなぎ、それぞれの強みを活かした様々な金融、その他サービスをOrigami自身が開発せずとも提供できる。その点で、巨大な経済圏を獲得する可能性を秘めたプレイヤーであると筆者は考える。

 一刻も早く足場を固め、プラットフォーマーとしての確固たる地位を築いて生き延びてもらいたいものである。

エグゼクティブ・パートナー 内田  秀一

独立系ITコンサルティングファームを経て現職。
金融、流通小売業を中心に、IT戦略立案、業務改革、ITガバナンス強化、大規模プロジェクトマネジメント等のプロジェクトに従事。