デジタルトーク

2018.11.28

小売 消費行動のデジタル化を牽引するQRコード決済

QRコード決済に集まる注目

デジタル化によって顧客体験が大きく変化している昨今でも、特に顧客の消費行動として、最も変化の勢いを感じるのが決済シーンではないだろうか。実際、今年に入ってから決済関連サービスのニュースを聞かない日がない程だ。

中でも、特にQRコード決済は中国で拡大したAlipayやWeChatPayを成功モデルに見立て、国内の大手IT企業を中心に様々なサービスが立ち上がっている。

日本でも、経済産業省がキャッシュレス推進協議会を発足し、QRコード決済の規格統一を推進するなど、政府としてもキャッシュレス化に向けてQRコード決済を有力な選択肢として捉えていることが伺える。ここで改めてQRコード決済サービスの提供事業者やサービス内容について整理をしておこう。(図表1)
多数の事業者の中でも、やはり大手IT系と通信キャリアの動向には注目したい。

楽天が提供する「楽天Pay」やLINEが提供する「LINE Pay」では、どちらも既存サービス(楽天市場やLINE)の利用者数を強みに、加盟店や利用者に対する優遇策を積極的に打ち出すことでQRコード決済市場を主導できる可能性を秘めている。なお、これらの企業は決済サービスの参入をきっかけに、自社グループ内での経済圏(エコシステム)の強化が最終的な目的であるため、今後も金融を中心として様々なサービスとの接続を図っていくと考えられる。また、明確なサービス内容を明かしていないが、フリマサービスを提供するメルカリも参入を表明している。

加えて、今までキャッシュレス化を牽引してきた大手通信キャリアも決済サービスの再整理と、金融サービスの更なる強化を表明している。

当然、これらを迎え撃つ既存の金融機関も決済シーンを押さえる方法を模索しているだろう。数あるキャッシュレス決済の中でもQRコード決済をハイライトすることで、熾烈な決済プラットフォームの覇権争いが鮮明に浮かび上がってくる。今後の動向に注目だ。

そもそも、なぜQRコード決済なのか

政府も含め、QRコード決済を推進しているのはなぜか?(2020年までにQRコード決済は一定程度普及するというのが市場の見方である)。その最大の理由は導入の容易さにある。決済サービスとは、突き詰めれば個人を認識して商品・サービスの料金と紐付ける手段だ。便利であれば、NFC(非接触通信)でも、指紋や顔認証でもなんでもよいはずだ。しかし、店舗側、特に中小規模の小売店にとっては認証・決済端末とその手数料は大きな負担であるため、なかなか普及が進まなかった。QRコード決済であれば、表示するモニターだけ用意すればよく、利用者のスマートフォンにももれなくカメラが付いているためカバレッジも高い。結果的にサービス事業者も、低コストを背景に手数料無料化等のキャンペーンを打ち出しやすくなる。これらの事情が、政府のキャッシュレス化を推進したい狙いと合致しているのだ。

QRコード決済に対応するお店が増え、さらにポイント還元などのメリットがあれば、利用者も広がっていくに違いない。少なくとも中国では成功している、確度の高い戦略なのだ。

QRコード決済が主流になるのか

ではQRコード決済は、決済の主流であり続けるのか?
答えはNoだと考えている。ポイントはインバウンド対応と、UX上の欠点だ。

2020年東京オリンピックを控え、インバウンド対応は必須のテーマだが、インバウンドは当然ながら中国人だけではない。クレジット・デビットの普及が進んでいる欧米圏の顧客を考えれば、あらゆる店舗でカードが利用できる状態が必要になる。その結果、カード決済や非接触決済(Suica、QUICPay・iD や、VISA/Master/JCBが提供するサービスなどの電子マネー)に対応した端末の普及も求められるだろう。

UX的にも、QRコード決済は最良ではない。Apple Payなどを利用したことがある方はイメージ頂けると思うが、わざわざレジでスマートフォンアプリを立ち上げてQRコードを提示(もしくは読み取り)して支払操作を行うQRコード決済と、レジの端末にスマートフォンをかざすだけで決済が完了する非接触決済を比べると明らかに後者の方が優れたUXと言える。

こうした利用者の利便性の観点から、決済におけるキャッシュレス化が進んだ場合に、最終的に主流になるのは非接触決済であり、QRコード決済はキャッシュレス化を推進するためのカンフル剤・繋ぎの役割を期待されていると考えるべきだろう。

それでも現金は残り続ける

将来的に非接触決済を主流としたキャッシュレス決済が相当程度普及するものと考えられるが、すべての決済がキャッシュレスになるとは考えにくい。一部現金が残り続けるだろう。

先日の北海道地震に伴う停電の影響でPOSレジでの決済ができなかったように(停電時など電力供給が滞った際のサービス可用性はデジタルサービス全般の課題ではある)、災害時などでは現金決済に頼らざるをえないのが実情だ。

また、高速道路料金の例を見ても、ETCの普及はかなり進んだものの、全てのレーンがETCにはなっておらず、現金のレーンは残り続けている(ただし、ETCを搭載することで割引が受けられ、結果的に90%近い普及率を実現、渋滞緩和にもつながっている事実は、UXの向上を通じてキャッシュレス化を推進した貴重な成功例ではある)。

消費行動のデジタル化のゴールは何か

結局、決済シーンを含めた顧客の消費行動はどこに着地するのだろうか? ユーザー目線で考えた場合、究極は、決済という行為そのものがなくなること。これを実現しようとしているのがAmazon Go(ただし現時点ではQRコードを入店時にかざす必要あり)や中国のAliPayを利用したサービスだ。将来的には生体認証やNFC/RFIタグなどの利用により、QRコードを入店時にかざす必要すらなくなるだろう。

また物品の提供以外にも、例えば飲食やマッサージ、映画などのサービスをオンラインで予約して、お店に直接行ってサービスを受けることができ、決済は自動的におこなわれているという状況はより近い未来で普及するだろう。こういったサービスにおいては、WeChat等の大規模プラットフォームだけでなく、ぐるなび等の業種を絞った情報提供を強みとする事業者も重要なプレイヤーだ。

消費行動の進化によって、利用者はレジでの行列待ちなど決済行為に時間をかけることなく、買い物やサービスそのものに、より時間をかけることができる。また、お店側にとっても、レジ業務などの決済行為に関わる労働時間をサービス提供や顧客対応に割くことができ、お店のサービス品質の向上にもつながる。その結果、利用者の増加や売り上げの上昇といった好循環を生み出すことができる。

結局のところ、「利用者」と「小売店」にとって最大価値を享受できる「決済のかたち」が今後の消費行動を変えていく原動力になるだろう。

シニアマネージャー 和田 安有夢

大手コンサルティングファームを経て現職。
金融・官公庁・自治体を中心に、IT戦略立案、業務改善、サイバーセキュリティ態勢強化など多数のプロジェクトに従事。
直近ではモバイルペイメントサービスなど、デジタル×金融をテーマとした新規サービス検討や立ち上げにも複数関与。
社内にてプロジェクトマネジメントに関する研修を多数実施。

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