夏の風物詩、甲子園が取り組んだデジタル化の顛末
2018年8月に行われた第100回全国高等学校野球選手権記念大会は、周知の通り、大阪桐蔭が決勝で金足農業高校に勝利し、春夏通算8度目の全国制覇を達成。同時に史上初の2度目の春夏連覇を果たした。節目の100回大会ということもあって例年以上の盛り上がりを見せた今年の高校野球だが、白球を追う球児たちの勇姿の裏で、「高校野球のあり方そのものにも関わる大きな変化」の兆しがあったことはあまり知られていないのではないだろうか。
最も大きな変化としては、バックネット裏の特等席が全席指定となり、販売方法もインターネット販売へと変わったことが挙げられる。目的は「ここ数年深刻化している混雑の緩和と、混雑に起因するトラブルの防止」とされている。だが、その結果を見ると、デジタル化の難しさを改めて考えさせられる。例えば、8月18日の準々決勝第一試合、大阪桐蔭vs浦和学院という優勝候補同士の対決では混雑を緩和することができなかった。総座席数47,508席に対して、指定席化したのは約5,000席だったためだ。事実、1・3塁側にある特別自由席の当日券を目当てに、前日の試合終了時から徹夜組が長蛇の列を作った。
混雑とは別のトラブルも発生している。バックネット裏の特等席がインターネット販売となったことから、チケットの高額転売が横行したのだ。インターネットチケット販売では、需要数が供給数を上回ったとき、購入操作スピードが当選確率を左右する。操作方法を熟知した人がチケットを購入し、チケットの二次流通サービスで高額出品するため、どうしても観戦したい人は高額で購入せざるを得なくなる。当日券を購入できなかった人を狙ったダフ屋も現れ、8月21日決勝ではダフ屋行為を取り締まるパトカーが出動する事態にまでなった。
長年、高校野球を支えてきたコアファンへの影響も懸念される。バックネット裏と言えば、従来は中央特別自由席とされており、いわゆる早い者勝ちで席が決まっていた。昔ながらのコアファンは第1試合から第4試合まで同じ席に座っていた。今年のバックネット裏はと言うと、そういったコアファンの姿が少なくなっていた。高齢者が多いこともあり、インターネットの利用方法がわからないから諦めたというファンもいると言う。