デジタルトーク

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2018.03.20

小売 ZOZOスーツは女心にもフィットするか?

大きな反響を呼んだ、ファッションECの新コンセプト

 2017年11月、ファッション通販(EC)サイト「ZOZO TOWN」を運営するスタートトゥデイが、体のサイズを一瞬で採寸することができる伸縮センサー内蔵のボディスーツ、その名も「ZOZOSUIT(ZOZOスーツ)」の無料配布を開始した。スタートトゥデイのプレスリリースによると、「(ZOZOスーツの)トップスとボトムスの上下を着用し、スマートフォンとBluetooth通信で接続することで、人体のあらゆる箇所の寸法が瞬時に計測でき、そのデータをZOZOTOWNアプリに保存する事ができます」とある。
 
 ZOZOスーツ無料配布の目的は、発表されている限りでは2つある。1つは計測した体型データを活用し、ファッションECでも顧客が自分に合ったサイズを手軽に選べるようになること。もう1つは同日発表されたプライベートブランド 「ZOZO」 から展開される商品の開発に活用することである。
 
 洋服のサイズ規格はブランドによって少しずつ異なることが多く、試着しないとサイズがぴったりかどうかわからない。この不安感が、オンラインショップのボトルネックになっていたことは間違いないだろう。ところが、ZOZOスーツで計測した数値をZOZOTOWNアプリに登録すると、その人にぴったりのサイズをお勧めしてもらえる。こうなれば「試着できない」という従来ECのハードルを飛び越えることができる。非常に大きな変革なのである。
 
 このニュースには多くの人が関心を持ち、ZOZOスーツが発表された正午の予約受け付け開始から10時間で、なんと23万件もの予約があったという。その結果、ZOZOスーツの生産が間に合わず、配送が大幅に遅延していたが、2018年1月31日にようやく配送がスタートした。最初に注文した予約者から配送を始め、11月後半に注文した予約者は最大6カ月、それ以降の予約者には最大8カ月かかる可能性があるという。

新コンセプトは女心にイノベーションをもたらすか?

 さて、多くの人が待ち望んでいるこのZOZOスーツについて、1つ気になることがある。「23万件の予約のうち、男女比はどれくらいなのだろうか」ということだ。女性ならば、「Sサイズの誘惑」というものを経験した人が少なからずいると思う。つまり、「洋服売り場でSサイズとMサイズを試着した場合、仮にMサイズの方が着心地が良かったとしても、Sサイズでも着られないこともないと思うと、ついSサイズを選びたくなる」という誘惑である。サイズのタグを人に見られることはない。だから実際は、Sサイズを着ているかMサイズを着ているかなど、誰にも気付かれはしないのだが、「細身で華奢なイメージのSサイズ」を着たくなってしまう。それが女心というものなのである。
 
 同じ理屈で、ZOZOスーツでもこんな心理が働かないだろうか。ZOZOスーツで計測したボディサイズのデータは正確なはずだ。そうでなければ価値はない。だが、そのデータが正確であればあるほど、女心のほうはそれを認めたがらない。ましてや「他人(企業)になど渡してなるものか」という心理も働く。
 
 筆者の偏った予想はこうである。ZOZOスーツで収集できるデータを歓迎し、何の迷いもなく活用しようと考えるのは、限られた人たちなのではないか。男性、もしくは上記のような感情を持ち合わせていない「体形に自信のある女性たち」に限られるのではないだろうか。もしこの仮説が正しければ、男性向けの商品はまだしも、女性向けの商品としては万人受けしづらくなる。モデルのような体型の人に向けた、ニッチなターゲットを対象とした商品、あるいはオーダーメイドによる受注生産を前提とした特定商品向けのサービスになってしまう恐れすらある。

 もちろん、その予想は的外れかもしれない。ZOZOスーツが、新しい技術を活かした画期的なサービスであることは間違いないところだ。このイノベーションが、頑なな女心をも変えてしまう可能性だってある。しかし、サイズを教えることに抵抗感を覚える女性は、現に多数いる。そういう顧客に対して、抵抗感を超えるような満足感や、女心をくすぐるアイデアを提供することは重要だ。それこそが、次世代のファッションECに求められる体験価値ではないだろうか。

マネージャー 鈴木 典子

外資系コンサル、ヘルスケア系事業会社を経て現職。
デジタル・イノベーション・ラボ所属。
現在は金融・ヘルスケア業界のリサーチ、提案支援に従事。