デジタルトーク

2018.04.03

共通 シェアリングエコノミーは日本で定着するか

日本版シェアリングエコノミーの実態

Airbnb、Uberなど、本場アメリカではすっかり定着した感のあるシェアリングエコノミー。日本でも「ビジネス系のメディアによっては目にすることもある」程度の認知度にはなってきた感があるが、では実際に使ってみた人の感想を聞こうとすると、これがなかなか難しい。というのも、どうやら日本で一般的シェアリングエコノミーと呼ばれているサービスには、急成長したmercari等に代表される、いわゆる"C2Cのマーケットプレイス"が含まれているらしく、真の意味でのシェアリングエコノミーの利用経験のある人が少ないのだ。

そもそもシェリングエコノミーとは、どのように定義するべきものだろうか。総務省の情報通信白書によると「個人が保有する遊休資産をインターネットを介して他者も利用できるサービス」と記載されている。そう、「個人が保有する遊休資産」という部分がポイントだ。例えば、日本でもUber自体はサービスとして提供されているが、その実態は単なるハイヤーだ。個人の余剰リソースを有効活用するという、シェリングエコノミーの概念に合致しているとは言いづらい。

シェアリングエコノミーの中でも有力なサービスと言われている民泊事業にしても、利用者はまだまだインバウンドが中心である上に、今後の法令・規制の動向次第ではサービス提供の形態がより制限される可能性もある。サービスの利用側も、提供側も、いまひとつ踏み出せていないのが日本におけるシェアリングエコノミーの実態なのだ。
出典:総務省「情報通信白書」
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc112220.html
そもそも、日本においてイノベーティブなサービスが広まりづらいという事実は今回に限った話ではない。特にシェアリングの様な、既存のサービス事業者の提供している価値をC2Cの概念で置き換えようとするサービスにおいては、既存サービサーのサービスレベルが高く、消費者の感じている不満が少ないことなどに加え、イノベーター・アーリーアダプターとなるべき層の不足が問題だと感じられる。アメリカでは、今までにないサービスに飛びついて価値の拡散に貢献しているのは、いわゆるミレニアル世代と言われるデジタルネイティブ達だ。彼らの所得が上がってきたことと、数々のイノベーティブなサービスがアメリカで急拡大してきたことは無関係ではないはずだ。翻って日本では、若者の将来に対する不安が高まるニュースが目につき、イノベーティブなサービスが爆発的に広まった例もなかなか出てこない。彼らの消費が向かっている先は、今までにない新たなユーザー体験ではなく、オンラインのゲーム課金に代表される、刹那的なデジタルコンテンツだ。

今後に期待したい新サービス

閑話休題、そんな閉塞感の中でも、個人的に特徴があり、今後に期待したくなるシェアリングエコノミーのサービスを2つ取りあげ、紹介しておきたい。

1つは、株式会社ポップコーンシアターの提供する、”popcorn”というマイクロシアターのプラットフォームだ(https://popcorn.theater/)。マイクロシアターとは、一定以上の広さの場所を用意するだけで誰でも映画の上映会を主催できるサービスだ。空間をシェアするという意味では民泊や会議室のシェアリングと同様だが、今までハードルの高かった映画の上映というイベントに一般消費者がリスクなくチャレンジできるように、権利処理の代行や上映機器の貸出等をプラットフォームとして提供することで、単なる空間とイベントの仲介とは異なる、付加価値の向上を実現している。昔ながらのミニシアターが少なくなり、大手のシネコンで大作だけがスクリーンに掛かるようになっている近年において、新たな映画体験を作り出そうとしているシェアリングエコノミーなのだ。

もう1つは、今やデジタルサービスの事業者として知らない人はいないであろうDeNAが運営する、”Anyca”というカーシェアリングのプラットフォームだ(https://anyca.net/)。オーナーは無料で自分の車を登録することができ、利用者に車を貸し出すことで料金の一部を収入として得ることができる。アイデアとしてはシンプルに感じるが、ユーザーが利用しやすい様に保険(東京海上と連携)や決済等、細かい部分で様々な機能をプラットフォームとして提供している。車の貸し借りでユーザーが最も心配するであろう、安心安全の部分を確実に担保しているのだ。

両方に共通するのは、ユーザーが最も気にするであろうポイント(シアターであれば権利処理、カーシェアであれば不慮の事故に備えた保険)に確実に対応する機能をプラットフォームとして備えているということだ。前述の通り、新しい体験に踏み込みづらい日本人向けにシェアリングエコノミーを広めるためには、プラットフォームとして単なるマッチングに留まらない機能の提供が求められると言えるだろう。先行きに不安があると述べた民泊においても、専用の保険がスタートしている(https://minpaku-hoken.jp/)。ユーザーの囲い込みよりも、プラットフォーム機能の拡充がシェアリングエコノミーを成功させる鍵になるのかもしれない。上記の2サービスを始めとして、日本ならではのシェアリングエコノミーの誕生と拡大に期待したい。

マネージャー 松本 敦

エンタメ企業を経て現職。
通信・ハイテク・メディア企業を中心に、経営計画の策定、サービス企画立案、実証実験の実行支援等のプロジェクトに従事。

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