デジタルトーク

2017.12.14

小売 無人コンビニの波は日本にも押し寄せるのか

無人コンビニの誕生

2016年12月、アマゾンが人工知能(AI)やコンピュータービジョン(画像認識による来店人物の特定方法)など先端技術を駆使して、レジ精算なしで商品を購入できるAmazon Goを発表した。公式イメージ動画では、欲しい商品を店から持って出るだけで買い物が完結するシーンが描かれている。これは、消費者の購買体験においても、小売業界にとっても、大きな変革が起こるのは間違いない。しかしその後、技術的な不具合により一般公開を延期するとの報道がなされた。あらゆる事象を想定するとなれば、実現に向けた技術適応の難易度はやはり高いようだ。

一方、中国では既に無人コンビニが実用化されており、飛躍的に店舗数が拡大しつつあるというから驚きだ。Bingo Boxは上海と広東で計10店舗の無人コンビニを運営しており、今後1年以内に5,000店舗の出店を予定しているとの報道もある。入店する為には 専用の決済IDが必要であり、入口でスマホアプリをかざし本人認証がされると入店が可能になる。すべての商品にRFIDがついておりレジでは複数商品を一括で読み込むことが可能。支払いはWeChat Pay またはAlipayを使って決済する。

ガラパゴス的な進化を続ける日本のコンビニ

では、我々の生活には欠かせない存在となっている日本のコンビニはどうか? 近い将来、無人になることがあり得るのだろうか。日本の現状を踏まえつつ、その可能性を考えてみたい。

2017年4月、経済産業省はコンビニ大手5社と共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表した。2025年までにすべての取扱商品に電子タグを貼付し、消費者が自分で会計するセルフレジを国内全店舗に導入する計画だ。レジ業務を中心とした業務改善だけでなく、販売状況をメーカーや物流業者とも共有し、サプライチェーン全体の効率化を狙うというものだ。

ローソンは2017年2月に完全自動セルフレジ「レジロボ」を導入。1つひとつの商品に電子タグを付け、それら複数の商品情報を一瞬で読み取るシステムを完成させた。また、同年12月にはスマホアプリを活用し、午前0時~5時は従業員が接客せずに「無人」で決済できる店舗を首都圏の2~3店舗から実験的に開始することも発表している。

ファミリーマートは伊藤忠商事・LINEとの業務提携により、LINE Payによる決済サービスの活用、画像認識やAIを活用したオートメーション化などによって、「次世代コンビニ」を推進すると発表している。

以上のように、各社とも業界共通の喫緊の課題である人手不足の解消に向けて、先端技術を活用した取組みを進めている。しかし、今あるコンビニの多くが無人店舗となるかというと、そこまでの変化は起きないという見方が現状では優勢だ。

理由の1つ目は、日本人の決済に関わる意識の問題だ。世代や地域により偏りはあるものの日本人はまだまだ現金至上主義の傾向が強く、他国に比べてキャッシュレスによる決済の割合が著しく低い。コンビニ各社ではクレジットカードや電子マネー、Alipay・ApplePayなどのQRコード決済など多様な決済手段を用意しているが、いまだに現金による支払いが全体の7割を超えているのが実態だ。キャッシュレス化を進めるには、業界や各社ごとの対応では不足だと考えられる。行政主導の取り組みによる意識改革が必要だろう。

2つ目は、ガラパゴス化によって導き出される問題だ。日本のコンビニは、「コンビニエンス」という言葉の意味と消費者ニーズとを的確に捉え、日々の生活になくてはならないサービスを次々に具現化して進化してきた。他の国とは異なる、良い意味でのガラパゴス化がしっかりと機能して価値を生み出している。例えば、店舗で作る温かいお弁当やファストフード、淹れ立てのコーヒー、ネット通販の受け取りや郵便サービス、公共料金や税金などの収納代行、店舗によっては自宅へのお届けサービスや医薬品の販売に至るまで、数え切れないほどの商品・サービスが揃っている。少なくとも現時点では、従業員による接客が他社との差別化になっているサービスも多いため、自動化・効率化を求め過ぎ、競争力の源泉を失うことは避けなければならないだろう。

3つ目は、コンビニが担う社会的な役割への期待だ。セーフティステーション活動を通じた防犯対策や高齢者の見守り、災害時の被害情報の共有や物資の流通支援など、今やコンビニは国全体が抱える課題への対処においても大きな期待が寄せられている。例えば、東日本大震災や熊本地震においては、帰宅困難者の一時待機場所や支援物資の供給、移動販売を含めた震災直後の営業再開などで地域に貢献をした。被災者からも「コンビニが近くにあって良かった」、「安心できる」と、その存在価値を支持する声が高い。

しかし、以上のような現実問題を踏まえつつも、中長期的には変化が起きていくだろう。新たなサービス開発による接客の自動化、顧客ごとにカスタマイズした商品・サービスのリコメンデーションなど、現状とは異なるコンビニの姿が実体化してゆくのは間違いない。1人の消費者としては、より快適に・より便利になることを望む一方で、人と人との触れ合いがなくなることへの寂しさも感じてしまう。

希望も込めて言うと、日本らしさである「“おもてなし”=従業員による接客」と、「人手不足の解消・消費者の便利さ追求=無人レジ」の併用が現時点における最も妥当な現実解ではないだろうか。

パートナー 齋田 清和

外資系ソフトウェアベンダー、総合コンサルティングファームを経て現職。
金融・製造・通信・小売などを中心に、業務改革、組織改革、営業戦略やIT戦略など多数のプロジェクトに従事。
共著書に『デジタル化を勝ち抜く新たなIT組織のつくり方』。

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