ベイカレントの考えるデジタル変革のゴールデジタルインテグレーションという選択肢

 日本版デジタルトランスフォーメーションでは、セルフディスラプターとして、ビジネスモデルまでを大きく変えるのは簡単ではない。かといって、小手先のIT化に留まっていては、今後の成長性だけでなく、企業の存続性さえも危ぶまれる。どんな形であっても、デジタル化を前に進めなければならない。

 トップの強力なリーダーシップが働きにくい日本では、自らの力による急激なセルフディスラプションではなく、一歩一歩変革を進めて行く形でのデジタル戦略の実現が求められている。一歩ずつ着実にデジタルでのイノベーティブな価値を増やしていく。いきなり既存のビジネスモデルでの変革を目指すのではなく、既存のビジネスモデルの周辺でデジタルの価値を提供できるビジネスモデルを立ち上げて、段階的に移行をしていくことが成功へつながる。

 日本企業としては、一歩ずつデジタル武装を進めるのが適切だと考えている。我々は、それをオペレーションの効率化を目指す「デジタルパッチ」とデジタルトランスフォーメーションの間に位置づける「デジタルインテグレーション」と定義している。
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2017.11.20

トレンド・背景

 デジタル技術はまだ進化を続け、我々の生活はどんどん快適になる。この中でどのような価値を提供していくのかを見定めいくことが必要となる。そのため、実行フェーズへ向けたロードマップを描くべきタイミングに来た。デジタルに没頭する顧客に寄り添い、デジタルディスラプターの追撃をかわすため、日本企業のデジタル武装は待ったなしである。
 この状況の中で、経営者の危機感は高まり、デジタル推進の専門組織を設けて、デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業も多い。それをサポートするためにコンサルティング会社やSIerを始めとする事業者も取り組みを行っている。

 だが、どこへ向かうべきなのか、目標が定まっていないのが多くの企業の実態ではないだろうか。とりあえず走り出し、走りながらゴールを見つけようということなのだろう。それもやり方としては否定できないものの、「ビジネスモデルを変革しよう」と経営層が情報を発信しても、その方向が定まらなければ、何をどのように変えて行って良いのか、従業員は戸惑うだけになる。

何をすればよいのか

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成功の鍵

 「デジタルパッチ」とデジタルトランスフォーメーションとの間に位置づける「デジタルインテグレーション」。我々は、「デジタルインテグレーション」という言葉には、6つの意味合いを込めている。

  ・顧客に寄り添う
  ・デジタルとリアルのチャネルを融合する
  ・プラットフォーマーの提供するサービスと融合する
  ・オープンAPIを活用し、他社のサービスと融合する
  ・従来の日本式やり方に、シリコンバレー式の事業立上げ方法を統合する
  ・社外からの中途採用者を融合する

 デジタル技術を活用して、ターゲットである顧客の業務や行動を丸ごと囲い込んだサービスを目指すステップが「デジタルインテグレーション」だ。ただし、大がかりにビジネスモデルを変革するのではなく、一歩ずつ着実にデジタル化を進める。

 顧客を囲い込むために、「モノを買ってもらう」「所有してもらう」ことよりも「使ってもらう」ということに焦点を当てる。どのようなカスタマーエクスペリエンスを提供できるかが焦点となる。「使ってもらう」には、「誰が」「どのような場面で」ということを考えなければならない。ターゲットである顧客を決め、そのペルソナを描きカスタマージャーニーを想起する。

 その次は「何を訴求するのか」という問題だ。ここで「モノ売り」と「コト売り」の違いが生じる。モノ売りの場合だと、商品・サービスの機能が訴求点になる。顧客に基本機能、基本性能、追加オプションなどを評価してもらうわけだ。コト売りの場合には、商品・サービスで「どのような体験ができるのか」が訴求点となる。企業向けの場合、その体験は「どれだけ容易に仕事をできるようになるのか」などといったものになる。体験を訴求点するために、顧客の行動に沿ったサービスを提供する。

 カスタマージャーニーを描くのは、この訴求点を見出すためだ。製品・サービスだけでなく、「利用に至る前、利用している最中、利用した後」といった「前・中・後」の一連の行動を理解する。その行動を包み込むモデルを構築する。自社の強みを活かして顧客の業務や行動を丸ごと支援するのであれば、その強みを徹底的に追求するのは当然のことだ。

 

 例えばリクルートの取り組みでは、自社の強みを活かして「デジタルインテグレーション」をうまく進めた事例だ。同社は顧客接点を紙媒体からデジタル媒体に広げ、顧客に対して新たな価値を提供するデジタルサービスに着手した。飲食店や美容室を消費者に紹介するホットペッパーでは、根幹にあるビジネスモデルを大きく変えず、デジタルを通じて新しい価値を提供している。メディア媒体に掲載することで、多数の消費者をマッチングできるという自社の強みを最大限に活かし、店舗から掲載料を得るというモデルを変えていない。それに加えて、Webでの即時予約機能や、クラウドを使ったPOS(販売時点情報管理)機能などの提供を進めている。これは、店舗の業務をデジタルで丸ごと囲い込む取り組みである。顧客である店舗の立場に立つと、いずれも必要なものであり、そのすべてをサービスとして提供しようとするリクルートの考え方は理に適っている。

 「デジタルインテグレーション」で大事なのは、顧客に寄り添う形でサービスを組み立てることだ。既存のビジネスモデルの周辺で、デジタルの価値を提供できるサービスを立ち上げて試してみる。実際にサービスを提供する中で、一歩ずつ着実にデジタルによる新しい価値を増やしていきたい。