ベイカレントの考えるデジタル変革のゴール日本版デジタルトランスフォーメーション(DX)の4ステップ

 日本版DXは、①社内でのデジタル活用意識を醸成、②ビジネスモデルの再構築、③オペレーションの再構築、④ビジネスモデルのPDCAサイクルの構築、という4つのステップで進む。デジタル推進の専門組織を先に立ち上げて、4つのステップと組織・人材の再構築を並行して進めるのが、日本でのDX取り組みの特徴である。

 4つのステップを進めるにあたって、多くの企業はデジタル組織を中心として、主力事業の周辺領域や新たな領域でのスモールスタートで進めている。

 まずは、デジタル組織が、社内のデジタル活用意識を高める。全員の意識を一度に高めることは難しく、意欲のある事業部門を見極めて、実証実験(PoC:Proof of Concept)を通じたデジタル技術の活用の成功事例を作っている。

 次に、ビジネスモデルを再構築していくにあたり、顧客の行動過程でのカスタマーエクスペリエンス(CX)に注目して、アイデアを出していく。その際に、デザイン思考のアプローチを用いることも増えている。

 ビジネスモデルとして推進可能であれば、オペレーションの再構築を進める。従来のオペレーションの仕組みに囚われず、外部プラットフォームやAPIを用いてEnd to Endのプロセスを作り上げる。その際に、重要視されるのは立ち上げのスピードだ。

 最後に、オペレーションからビジネスモデルへのフィードバックができる形での、PDCAサイクルを構築していく。オペレーション改善に向けたフィードバックの仕組みを整えるだけでなく、ビジネスモデルに修正を反映する仕組みも求められる。
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2017.11.20

トレンド・背景

 デジタル化により消費者の行動が変わってきている。モノの利用の仕方が変わるシェアリングエコノミー、生活に溶け込んだアンビエントという形でのデジタルデバイスの活用が進む。

 最初からそのチャンスを意識していたかはともかく、その変化を捉えたUberやAirbnbというデジタルディスラプターが登場し、タクシーやホテルといった既存の業界を脅かしている。業界により程度の差はあるものの、企業のデジタル活用の意識はかつてなく高まっている。

 さらに、企業がデジタルを活用できる環境が整ってきている。ゼロからの垂直立ち上げを可能にするデジタルプラットフォーム、他社のサービスとの連携によりサービスの幅を広げるAPIエコノミー、外部の力を取り込む「共創」やCorporate Venture Capital(CVC)によるデジタルベンチャーの買収も日常茶飯事だ。

 外部の変化に合わせて、会社を変えなければならないという強い危機意識が経営層を中心に強くなってきている。明確にDXをゴールとして、具体的なデジタル取り組みを進める企業も増えてきている。

何をすればよいのか

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成功の鍵

 DXの最大の敵は、社内の無関心だ。問題となるのは「自分の事業部門には直接の影響はない」「自分の仕事には関係ない」といった態度。特にB2Bの領域では、デジタルをわざわざ活用していなくても、ビジネスは回っていく。過去50年もの間、ビジネスの仕組みが何も変わっていない事業も存在する。

 DXに対して、社内に抵抗勢力がいることよりも、よく分からないことに無関心な人が多いケースが目立つ。子供のころからデジタルを使いこなしてきたデジタルネイティブや、デジタルガジェット好き以外は、デジタルを活用しきっているわけではないため、そのような環境下で、一気にデジタル化の大変革を推し進めることは難しい。まずは、DXをステップに分けて、段階的に進めて行くことが求められる。

 まずはデジタル組織を中心に、スモールスタートとして、成果が出やすいユースケースでの実証実験(PoC)を進めて行く。自社内での活用シーンを地道に探して、デジタルで実行可能かを検証し、成果を積み上げていくスタイルだ。PoCでの成果を、社内セミナーを始めとするPR活動を通じて、デジタル活用のメリットを社員に広く啓蒙していく。クイックヒットを積み重ねる中で、いままでのバズワードとは異なり、具体的な成果が目に見える形となって現れてくることを実感してもらう。この段階では、「確実に成果の出るテーマ」と、「少し背伸びしたテーマ」を組み合わせて行くことが重要だ。実証実験という言葉に引きずられて、壮大なテーマを選んでしまうと、成果が出るまでに時間がかかる。最悪の場合成果が出ずに、時間切れになってしまう。

 次の段階では、ビジネスモデルに落とし込むことになる。面白いビジネスアイデアがあれば、顧客への提供価値を練りながらビジネスモデルへと落とし込んでいく。リーンスタートアップの発想で、一部のロイヤルカスタマーに限定したり、社内の部門を仮の顧客に設定したりして、実行に移してみる。オペレーションも、内製主義にこだわらずに、外部の力を積極的に活用して、オペレーションを構築していく。外部のプラットフォームを活用しながらプロセスを作り込み、実行体制を整えていく。

 こうした取り組みは、いままでの新規事業の取り組みからは大きく逸脱している。新規事業を始める前には、市場環境や競合の状況を事細かに調べないとダメであったり、内部リソースを活用していくことが暗黙の了解になっていたりする。そこで、いままでと違うやり方での推進にあたって経営層のサポートが必須になる。DXが進んでいる企業では、既存の枠組みとは異なる形でデジタル活用を支援しようという意識が強くなっている。

 経済産業省と東京証券取引所が共同で実施した「攻めのIT経営銘柄2017」の調査では、ROE5%以上の対象企業の約3割が、実験的なITのトライアル投資について、他の投資と異なる意思決定プロセスや判断基準があるとしている。さらに、部門の業績評価にデジタルの活用度を織り込む企業も出てきている。

 ビジネスモデルを立ち上げて終わりではない。多くの場合は顧客のニーズを取り違えていると考えた方が良い。その場合に、速やかにビジネスモデルの方向転換を図るピボットと呼ばれる考え方が求められる。最初から見直しありきの発想で、オペレーションの中に、ビジネスモデルにフィードバックをできるサイクルを構築しておくことが必要だ。