ベイカレントの考えるデジタル変革のゴールデジタルトランスフォーメーション(DX)の4つの要素

 DXでは、ビジネスモデル、オペレーション、IT、組織・人材の4つの変革が揃わないと実現できない。変革の起点として、顧客に新たな価値を問いかけるため、カスタマーエクスペリエンス(CX)への深い理解が必要だ。

 ビジネスモデルの変革では、顧客像(ペルソナ)・カスタマージャーニーの具体化からスタートし、CXという観点から提供価値のゼロベースでの見直し、それに合わせた収益モデルの構築が求められる。オペレーションでは、既存プロセスのデジタル化に留まらず、ビジネスモデルの実行からフィードバックまでのEnd to Endプロセスの再構築が必要だ。ITでは、既存のIT資産の活用目的、方法の見直しまで踏み込む。最後に、組織・人材では、既存組織と切り離したデジタル組織の設立、デジタル組織を率いるリーダーであるチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)の配置、デジタル人材の登用/育成が求められる。
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2017.11.20

トレンド・背景

 DXという言葉は、デジタルによる日常生活の大きな変化を指す言葉として、スウェーデンの大学教授が2004年に定義したのが最初とされている。それから10年後の2014年頃から、企業全体の変革を指す言葉として使われ始めた。言葉の成り立ちが示しているように、DXの大前提には顧客である生活者のデジタルによる行動の変化がある。スマートフォンを使う人がいなければ、誰もスマホ用サイトやアプリを使ったサービスを開発しないということだ。

 多くの企業で語られているデジタル化は、デジタルデバイスの導入、顧客接点のデジタル化、外部ツールによる業務の自動化という、我々が「デジタルパッチ」と呼ぶ個別のデジタル対応の状態にある。もちろん、「デジタルパッチ」でも、顧客の利便性を高め、業務を効率化できるので、最初のステップとして進めていくべきだ。

 しかし、さらに次の「デジタルインテグレーション」、そして最終形としてDXを目指すのであれば、個別にデジタル化の対応をしているだけでは足らない。

何をすればよいのか

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成功の鍵

 DXでは、CXの向上に向けた、ビジネスモデル、オペレーション、IT、組織・人材の抜本的な見直しが不可欠となる。多くの企業が「単なるデジタル化」に留まるのは、ビジネスモデル、オペレーション、IT、組織・人材を個別に見直すことから抜け出せないためだ。

 ビジネスモデルの見直しから始めた場合、新たなビジネスの売上が数億円を超えたあたりで、失速してしまうことが多い。ビジネスの立ち上げ時に設計したオペレーションやシステムが、顧客の増加に対応できなくなり、顧客対応の遅延やシステムダウンによるサービスレベルの低下が目立つようになるからだ。結果として、既存の顧客が離れ始め、口コミ評価も悪くなるので、新たな顧客もサービスを使うのをためらってしまう。裏にあるのは、ビジネスモデルの立ち上げ期に、業務プロセスの専門家であるオペレーションデザイナーやシステムの専門家であるスーパーエンジニアを、既存のビジネスから引き離して配置することの難しさである。そのため、ビジネスアイデアを考えることが得意なビジネスアーキテクトだけで、走り始めてしまう。立ち上げ時に、オペレーションデザイナーが業務量の増大を想定して業務プロセスを設計し、スーパーエンジニアがスケーラビリティの高いアーキテクチャーに沿ってシステムを作れば、サービスレベルが急に低下することはない。

 次に、オペレーションの見直しから始めた場合、既存のビジネスモデル、組織・人材の見直しまでの動きは出てこない。既存顧客の不満、社内ユーザーの要望、組織間での役割分担に囲まれて、担当者が実施できることの制限が多い。好き放題に要件を言ってくる関係者間の調整をするだけで精一杯となり、新しいことを考える余裕などなくなる。内部からは地道な改善活動を進めている様に見えるけれども、外部からはそこから新たなCXの提案、業務プロセスの変革、他部門の役割まで踏み込んだ対応が出てくるように見えないことが多い。

 組織・人材の見直しから始めた場合、デジタル活用を推進する専任組織を立ち上げるのが流行のアプローチだ。時価総額の上位100社の中では、既に57社(2017年8月時点)が導入している。その多くが、既存の課題の解決ではなく、新たな価値の提供を目指している。新たな価値を提供するために、とにかく新しいテクノロジーを使ってみるという発想からスタートする「テクノロジー起点」、もしくは、自社の製品・サービスにデジタルを活用する発想からスタートする「プロダクト起点」がある。業界の傾向としては、金融業界やサービス業界ではテクノロジー起点で組織を立ち上げているケースが多い。一方で、製造業は自社の製品にデジタルによって新たな価値を付加するプロダクト起点で組織を立ち上げることが多い。ただ、成果が出ずに、そのまま社内から忘れられた存在になってしまうこともある。衝突を恐れずに、社内の常識から外れたビジネスの立ち上げや、新たなオペレーションを始めるようなビジョン・推進力・影響力のあるリーダーが、なかなか社内にはいないためだ。

 ネガティブなことばかり話していると、DXを進められている企業がそもそも存在するのか、という質問が出てくる。そのたびに、GEのDXの事例を紹介している。GEは、2012年から「インダストリアルインターネット」というコンセプトで、従来の機器売りからデータを統合・活用したサービスへとビジネスモデルの転換を図っている。その中で、ビジネスモデルだけでなく、オペレーションとしてアジャイル型の開発手法を採り入れたり、ソフトウェア開発センターを開設したり、のちにCDOとなるリーダーをIT大手のCiscoより招聘している。さらに、開発を担うソフトウェアエンジニアを千人規模のレベルで採用している。ビジネスモデルだけでなく、オペレーション、組織・人材の見直しを同時にやり切ってしまったのだ。

 ビジネスモデル、オペレーション、IT、組織・人材の一体での見直しが、DXの実現に近づく唯一の方法なのである。