顧客接点でのデジタル活用デジタルマーケティングに戦略は必要か

デジタルマーケティングにおいては、「頭で考えずに、とにかく顧客にぶつけて、修正していく」という考え方がある。キャンペーンを繰り返しながら、トライ&エラーの中でコミュニケーションを精緻化していくものだ。

反面、「顧客に対するコミュニケーションの流れを、シナリオという形でしっかり準備するべきだ」という考え方もある。その裏には、一貫したメッセージを継続的に届けることで、顧客の購買意欲を高めていく発想がある。顧客を育てるという観点から、「ナーチャリング」とも呼ばれる。

このように、デジタルマーケティングのアプローチには大きな考え方の違いがある中で、デジタルマーケティング戦略というものをどのように捉えるべきだろうか。一つの答えは、デジタルマーケティング戦略は、自社のマーケティングコミュニケーションの全体像を決める羅針盤である、と言うものだ。羅針盤としての戦略を固めるために、ターゲットとすべき顧客、その顧客にアプローチするために重点活用するチャネル、最終的に顧客にアクションして欲しいゴールを決めていく。この羅針盤があることで、単に顧客のデジタル活用のトレンドを後追いするだけでなく、自社にとって意味のあるデジタルマーケティングの施策を考えることができるのだ。
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2019.01.11

背景・課題意識

マーケティング戦略という言葉をよく聞くのに、デジタルマーケティング戦略という言葉をあまり聞かない。デジタルマーケティングに、戦略は不要という声もある。考え込んで手が止まってしまうよりも、素早くやってしまった方が良い、という考えに基づくものだ。”Done is better than perfect”という、Facebookの行動規範もその顕著な例だ。実際に、マーケターが思いついたキャンペーンを次々に実施し、効果の出たキャンペーンだけを継続するという形で進めている企業も存在する。単発のキャンペーンでも、顧客にとって分かりやすく、すぐに買うかを決められる商品・サービスを扱う企業であれば、問題はない。ただ、多くの業界で、顧客は自分の好みに合わせてカスタマイズされた複雑な商品・サービスを求めるようになってきている。その中で、デジタルマーケティングでも「顧客に合わせたパーソナライズ」、すなわち顧客の購買意欲を少しずつ高めていく「ナーチャリング」という考え方が求められ始めている。

成功事例を追うだけではなく、自社の事業の特性に合わせて、デジタルマーケティングのアプローチを検討することが求められているのだ。

アプローチ

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成功の要諦

デジタル活用のシーンでは、エンドユーザーがトレンドを作り出す。ゆえに「頭で考えずに、とにかく顧客にぶつけて、修正していく」という考え方は重要だ。ただし、顧客に振り回され、意味のない後追いにならないように注意せねばならない。よくあるケースとして、エンドユーザーが次々にコミュニケーションチャネルを渡り歩き、企業はそれを追いかけるだけで必死になってしまうことがある。具体的には、エンドユーザーがLINEを使っているからと、LINEで自社のアカウントを作り、次はInstagramだからとインスタグラマーを使ったインフルエンスマーケティングをしてみる。それが、自社がターゲットと考えている顧客に、適切なタイミングで、適切なメッセージを伝えられるのであれば問題ない。ただ、多くの場合では意図に反して、自社のメッセージを幅広く伝えた、という結果しか見えてこない。
 
もちろん、自社の商品・サービスの認知を上げるということも、デジタルマーケティングでの一つのゴールにはなる。一方で、それ以外にも、顧客の行動が見えるという、デジタルマーケティングの特徴を活かした形でのアプローチもあるはずだ。事前に設計したマーケティングシナリオに基づいて、顧客との継続的なコミュニケーションを行い、徐々に顧客の購買意欲を高めていく「ナーチャリング」という考え方も出てきている。具体的な顧客像であるペルソナ、顧客の行動の連鎖であるカスタマージャーニーを作り、事前にマーケティングシナリオという形でゴールまでの道筋を描いている企業も存在する。そこには、長期に渡る持続可能なコミュニケーションを通じて、顧客のロイヤルティを上げていく明確な意図が存在する。

単に顧客が使うコミュニケーションチャネルに、分かりやすいメッセージを流し込むだけではなく、自社なりのターゲット、チャネル、ゴールというデジタルマーケティング戦略を確立していく。その羅針盤があるからこそ、顧客の反応を基に、マーケティングシナリオの間違いも見極めることができる。

しかし、デジタルマーケティング戦略の3つの要素のうち、ターゲット顧客、チャネルを決めることはできても、デジタルマーケティングのゴールを決めることが実は難しい。デジタルマーケティングではコンバージョンと一言で片づけられてしまうものの、コンバージョンを何に置くのかは意外に合意に至らない。事業のステージの違いや短期的にコミットしている予算数値があると、社内組織の間でのゴールのコンフリクトが発生してしまうのだ。また、顧客データを共有で使うことも多く、部門による利用目的のコンフリクトも発生してしまう。顧客へのクロスセルによる刈り取りを狙っている短期志向の部門もあれば、顧客のロイヤルティを高める関係構築を優先する長期志向の部門もある。自社として、共通のゴールを持ってなければ、顧客に矛盾したメッセージを伝えることになる。
 
それを避けるためにも、顧客像を具体化した上で、活用するチャネルの中で、目指すべきゴールを設定していく。さらに、全社としてそれを共有していく。顧客は特定の商品・サービスのものではなく、会社全体としての資産だからだ。デジタルマーケティング戦略を策定することが、その整理の一助となる。