顧客体験の非連続な変革カスタマージャーニーの考え方

デジタルディスラプターによって、日本企業がCX(カスタマーエクスペリエンス)を変革する必要性はますます強くなっている。しかしながら、多くの日本企業における取り組みは、既存の延長線としての商品・サービスの改善に留まっており、CX変革への取り組みとは言い切れない。

CX変革の障壁となっているのは、カスタマージャーニーの考え方だ。カスタマージャーニーは、ペインポイント・悩みの見える化ツールとして捉えるのではなく、感動CXの検証ツールとして捉える必要がある。
2019.01.11

背景・課題意識

多くの日本企業は、デジタル化による社会変革の真っ只中にあり、急速な変革に取り残されまいと苦悩している。タクシー業界は自動車配車サービス「Uber」が、ホテル業界は民泊情報サイト「Airbnb」が変革をもたらした。これらがもたらしたものの1つが、CX変革である。日本企業は、自らもCXに変革をもたらそうと取り組んでいる。CX変革アプローチを実現するツールの1つとして、「カスタマージャーニー」がよく使われている。カスタマージャーニーは、顧客が企業との接点及びその前後で体験したこと全てを一連の流れとして捉える。一般的に、カスタマージャーニーを全体像として、アンケートなどの調査を設計する。その調査結果を使用してカスタマージャーニーにおけるペインポイント・悩みを仮定する。ペインポイント・悩みを改善できた未来のカスタマージャーニーを描くことで、商品・サービスの改善に利用する。

カスタマージャーニーは、商品・サービスが解決するペイントポイント・悩みを明らかにするため、従来のCX改善には適している。一方で、ペインポイント・悩みを解消するだけでは感動を生むCXまで到達する可能性は低い。感動を生むCXを目指すのであれば、生活者の理解、ユースケースの策定、カスタマージャーニーの策定の順序で検討する必要がある。

アプローチ

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成功の要諦

真の生活者理解ができているか
購買レバーは、どんな行動をしたいか、どんな感情になりたいか、人からどのように思われたいかといった瞬間の感情によって引かれる。例えば「おいしいおにぎりを食べたい」事だけをニーズとして捉えていては、多様な生活者を理解できたとは言えない。朝は短い時間でお腹を満たす食事にしたいのかもしれない。ピクニックで家族と一緒におにぎりを食べることで、心地良い気持ちになりたいかもしれない。残業している同僚へのねぎらいで、おにぎりを差し入れしたいのかもしれない。生活者が商品・サービスを購入して使用する真のドライバーを明らかにするには、過去の経験を踏まえた上で、特定の状況に置かれた時に生まれる瞬間の感情を捉えなければならない。

人に話したくなる感動CXを提供できているか
感動CXは、瞬間の感情に適したユースケースを提供したときに生まれる。カスタマージャーニーから導き出した悩み・ペインポイントでは、嫌な経験を取り除くことはできても、おもてなしや”神対応”といった感動を与えることは不可能だ。例えば星野リゾートが運営する「星のや」では、お客様が最初に訪問した時、客室にシャンパンを持ち込んだとする。それに気づいたスタッフはお客様に頼まれなくても、すぐにシャンパンクーラーを用意して、部屋に届ける。この情報はお客様が再び訪れた時にも活かされ、最初から客室にシャンパンクーラーを用意しておく。この気配りこそが感動CXを生む。以前、満足した過去の旅行経験を思い出して再度訪れると、何年も前の体験なのに同じ気配りを受ける事ができる。自分でも気づいていなかった感情に適した気配りに心が揺るがされる。帰り道で会話にあがらないCXは感動CXとは呼ぶことはできない。人に話したくなるCXを目指すべきだ。
 
1人ひとりに合わせたカスタマージャーニーが作れるか
“ひとつですべてを満足させる”万能の解決策だけに捉われると、結局誰も満足させることはできない。感動CXを見出した上で、ユースケースを組み合わせていくと新たなカスタマージャーニーが見えてくる。星のやは、顧客情報を集約する情報システム「CRMキッチン」を独自に開発し、1人ひとりに合わせたきめ細かい気配りを実現している。お客様がシャンパンを持ち込む理由は、妻の誕生日をお祝いするためだ。受付では、「またのご利用ありがとうございます」のお声掛けがある。夕食では、冷え性の妻のために、ひざ掛けを用意してくれる。浴室では、タオルをたくさん使う子供のために、通常より多く用意してくれる。そして、客室でシャンパンを飲むタイミングでは、さりげなくケーキと誕生日プレートを用意してくれる。感動を生むユースケースとそれに付随するユースケースを組み合わせることで、感動が記憶に刻まれる。

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