日本企業のデジタルトランスフォーメーションのあり方デジタル人材育成の考え方

DX(デジタルトランスフォーメーション)に向かう戦略を考え、新たなデジタル組織を立ち上げ、いざ取り組みを推進しようとしても、社内にデジタルを理解した人材が枯渇していては上手くいかない。デジタル組織がいくら競合の動向やディスラプターの脅威を取り上げ、変革の必要性を説いたとしても、事業部門のデジタル感度が低い人たちにとっては、自分ごととして実感するにはハードルが高い。また、デジタル化の先鞭をつけるデジタル部門の人材も、単なるテクノロジーオタクで良いわけはない。

デジタルの取り組みを成功に導くためには、まず先導してくれるデジタルリーダーの存在が欠かせない。日進月歩で進化するデジタルの世界で、先進テクノロジーのトレンドを理解し、自社ビジネスへの適用方法を検討できる人物がそれに当たる。デジタル部門と事業部門にそれぞれリーダーを配置できると、両部門の共創関係を築くことができ、信頼関係や円滑なコミュニケーション、デジタルへの共通意識が生まれやすくなる。また、全社員が最低限のデジタルリテラシーを持つ事も必要となる。社内のあらゆる活動に対し、デジタルの活用可能性を見逃さないためにも、事業部門の社員も含めてデジタルについて考えるようにならねばならない。
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2019.01.11

課題意識

DXという大号令のもと、どの企業でもデジタル化の取り組みは必須となっている。多くの日本企業がデジタルを意識し始めた2016年あたりと比べ、着実な進化を遂げてきた。2016年はデジタルの必要性を感じてはいるものの、何から手を付ければ良いかわからない企業が多かった。2017年は経営層がデジタルへの取り組みを必須と捉え、全社的にデジタル化の機運が高まってきた頃だ。ただ依然として多くの企業で、具体的な取り組みがなかなか前に進まなかった。それが2018年に入り、実際にデジタル化の取り組みが動き出してきた。「数多くのPoCが実施された年」とも言える。PoC = “ポック”と称しても、誰にでも伝わるほどバズワード化した。しかし、まだまだ結果が出たとは言い難い。むしろPoCの先へ進めることに苦悩しているパターンが多い。理由はいくつか挙げられるが、最も重要なファクターが人の問題だ。デジタル人材が育っていないのだ。

デジタルの取り組みをゴールに結び付けるには、「デジタル部門が十分に調べ上げた技術シーズをもってPoC(実証実験)を主導すること」、「事業部門が自分事として新たなデジタルビジネスやオペレーション改革のアイデアを創出すること」、「アイデアを形にするために両部署が一体となって取り組むこと」等が必要になる。そのため関係者全員がデジタル人材にならねば上手くいかない。そこに至ってないうちは、各部署からデジタルの取り組みに対する否定的な声が上がり続けることになるであろう。

アプローチ

デジタル人材に求められる要件
デジタルリーダーの育て方
全社員のデジタルリテラシーの高め方

成功の要諦

デジタルリーダーの育成
DXに向けた取り組みの推進役として、デジタルリーダーという人材が求められる。日進月歩で進化するデジタルを上手く使いこなすために、以下の能力を持った人材が支えるのだ。
  • 先進テクノロジーの大枠を掴んでおり、技術的なトレンドや活用事例を理解している
  • 自社の事業にどのように先進テクノロジーを活かせるか勘所があり、その検討ができる
  • ビジネスアイデアを引き出す能力とビジネスモデルを磨きこむ能力がある
3つは最低限と言えるものの、全てを兼ね備えている人材は社内を見渡してもごく少数に限られるだろう。しかし、企業としては根気強く育成していくしか道はない。デジタルリーダーがいないと、おそらくデジタル化の取り組みは途中で頓挫するか、大きく他社劣後した状態に沈む。さらにデジタルリーダーが担うべき役割は、デジタル部門で行うことと事業部門で行うことに二分されるため、それぞれに合った能力も必要ということになる。

まずデジタル部門のリーダーには、常日頃から先進テクノロジーに関する広く・深い知見を獲得しておくことが求められる。具体的にはディープラーニングやブロックチェーンを使えばどんなことができるか、人に教えられるレベルだ。プロフェッショナルとして社内のPoCやビジネス化判断の場に赴き、議論や意思決定を最前線でリードしていくことが求められる。一方、事業部門のリーダーには、先進テクノロジーが自社に与えるインパクトを理解・想像し、それを自社の事業やオペレーション、顧客に与えるインパクトにまで落とし込むことが求められる。また、関連する業界将来像や自社のあるべき姿を具体的に描けることも必要な能力となる。

以上のようにデジタルリーダーに求められるハードルは高い。候補となり得る有望な人材については積極的に社外セミナー、カンファレンス、アイデアソンなどに参加させ、外部との交流を深めるようなデジタル英才教育も検討すると良い。また、デジタルの知見に加えて自社事業についての理解も必要となるため、事業部門とデジタル部門のジョブローテーションも、有効な育成方法と言える。兼務が難しくとも、デジタル部門と事業部門の共創の場、例えばワークショップなどを主催すると、お互いの信頼関係や円滑なコミュニケーション、デジタルへの共通意識が生まれやすくなる。

全社員のデジタルリテラシーを高める
 ITの知識がない多くの事業部門の社員にとっては、デジタルと言われてもピンとこない。しかしこれからは、全社員が最低限のデジタルリテラシーを持つ事が必要となる。AIやブロックチェーンに対して拒否反応を示している場合ではない。せめて世の中の最新事例くらいは知っておかねば、自分達がどう取り組めるのか想像すらできない。企業がDXを最後までやり遂げるためには、会社全体の総力戦が求められる。社内のあらゆる活動に対し、デジタルの活用可能性を見逃さないためにも、関係者全員がデジタルについて考えるようにならねばならない。最低限、デジタル部門が推進するDX活動の内容くらいは理解しておいてもらいたい。「デジタルデバイスはちょっと苦手で…」などと言っている場合ではない。

では何をすべきかであるが、とにかくデジタルに触れ続けることから始める。デジタル教育に特効薬はなく、日頃からいかに社内でデジタルを使い、議論を尽くせているかが重要となる。例えば、「気になったデジタルニュースにコメントを付けて展開する」、「社内のデジタル関連セミナーへの参加を促し、部内にフィードバックさせる機会を設ける」などが良いだろう。各部門では、デジタル活用の議論を促進させるような仕組み作りを考える必要がある。自分たちの取り組みがデジタルで如何に良くなるか、自ずと考えられるようになったとき、会社全体の総力戦が進み始めるであろう。