日本企業のデジタルトランスフォーメーションのあり方デジタルトランスフォーメーションへの3ステップ

従来の戦い方ではデジタル時代を生き抜けないことは、日本企業の間で共通認識となっている。一方で、業界や企業を取り巻く環境により、求められるデジタル変革レベルが大きく異なるのも事実である。

デジタルによる事業構造の変革には、3つのステップがある。まずは既存モデルを前提に部分的にデジタル適用を図る「デジタルパッチ」、次にデジタルを活用して既存モデルの高度化や拡張を図る「デジタルインテグレーション」、最後に自社の事業構造そのものを変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」である。この3ステップをどこまで進めるか、そしていかに実現していくか。今、まさにデジタル戦略が、真価を問われている。
2019.01.11

背景・課題意識

DXは、元々「デジタルによる日常生活の変革」を意味していた。その言葉が企業目線で解釈され、現在では「デジタルによる事業構造の変革」の意味合いで使われている。グローバルはもちろん、日本企業においてもデジタル活用が強力に推進されており、DXの取組みは待ったなしの状況だ。一方で、一足飛びに事業構造の変革を成し遂げることは極めて難しい。既存事業はユーザー、チャネル、オペレーション、IT、組織など、長年に渡り築き上げてきた遺産(レガシー)を抱えているからだ。痛みを伴う事業変革を急激に推し進めることには、社内の抵抗もあるだろう。欧米のようにドラスティックな構造改革が受容されづらい日本企業においては、DXを段階的に進めることが最善の道と考える。

本稿では、DXの段階的な進め方と、その成功の鍵を提示する。

アプローチ

既出の通り、デジタルによる事業構造変革には、「デジタルパッチ」「デジタルインテグレーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3つのステップがある。

デジタルによる事業構造変革のコンセプト

デジタルパッチ
デジタルパッチでは既存のビジネスモデルを前提に、チャネルやオペレーションなどの個別領域へ部分的にデジタル適用を図っていく。生産性向上のためのデジタルツールの導入をイメージするとわかりやすい。デジタルパッチは既存のサービスや業務の延長線上で考えればよく、着手しやすい。また、事業部門内で臨機応変に対応できるため、短期間で成果を出しやすくはある。しかし、前述の通り、大企業はレガシーを抱えている。それに立ち向かわないデジタルパッチでは大きな効果は見込みにくいのが実情だ。また、組織の視点で見ると、各事業部門がバラバラにデジタル適用を進めている段階であるため、企業の全体最適に向けたコントロールを適用しづらい面がある。
 
デジタルインテグレーション
デジタルインテグレーションでは、デジタルを活用して既存ビジネスモデルの高度化・拡張を図っていく。その対象は、ターゲット、チャネル、オペレーション、ITなど幅広い領域に渡る。売上向上の観点では、CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上を目指し、既存のプロダクトやチャネルにデジタルの要素を融合させていく。その融合は自社内にとどまらない。他社が提供するサービスとの融合も意味する。コスト削減の観点では、本当の意味でのBPRを伴うかたちで、自社のオペレーション・ITをデジタルと融合させる。それによって、コスト構造の抜本的転換を図るのだ。痛みを伴う改革となるため、経営者には相当な覚悟が求められる。上記の実現には試行錯誤が必要であり、その過程では環境も激しく変化する。ウォーターフォール型の進め方では改革は頓挫する可能性が高い。その意味では、デジタルインテグレーションを組織目線で見ると、アジャイル型組織への転換の段階とも言える。
 
デジタルトランスフォーメーション
DXでは、デジタルを活用した新しいビジネスモデルへ、自社事業を組み替える。また、新しいデジタルビジネスモデルに適合するよう、組織の構造も抜本的に組み直す。「組織は戦略に従う」を体現するのだ。まさに、セルフディスラプションと言ってもよい。それを通じて革新的なCXを実現し、ディスラプターに立ち向かうのだ。トランスフォーメーションの契機は複数あるが、経営・事業環境の変化、テクノロジーの非連続進化とそれに向けた対応、そしてデータ活用の充実が主だったものである。「データが契機」という指摘は意外だと感じるかもしれない。しかし、企業活動の血液であるデータの活用の充実が、ビジネスに新たな道を開くのだ(データについては、別稿で詳述する)。

成功の鍵

3ステップそれぞれの成功の鍵は何だろうか。順に紐解いてみたい。

デジタルによる事業構造変革の3ステップ

デジタルパッチ
デジタルパッチは3つの中で最も計画的に取り組みを進められる段階である。それ故、体系的なアプローチが求められる。特に重要なのが、ユースケースとそのポテンシャルを洗い出すフレームワークだ。まずは、活用予定のテクノロジーで「できること」を網羅的かつ簡潔に整理することが肝要である。その上で、その「できること」を業務とクロスさせてユースケースを見出していく。しかし、全てを網羅的にクロスさせていってはキリがない。ポテンシャルが一定以上のところに絞る必要がある。ポテンシャルの見極めには、業界・自社特性を踏まえたポテンシャルドライバーの見極めが欠かせない。加えて、それらのフレームワークを使って洗い出したユースケースについて、PoCに終わらせない、全社展開まで見据えた実行計画を描き切る必要がある。その実行計画をやり抜けば、効果に結びつけられる(別稿「賽の河原化するPoCからの脱却」にて詳述)。
 
デジタルインテグレーション
デジタルインテグレーションの成功の鍵は、BPRをやり切ることにある。単なる業務改善ではない。本当の意味でのBusiness Process Re-engineeringすなわち「再構築」である。それなしでは、デジタルとリアルの融合は不完全に終わる。痛みに耐え抜く覚悟が必要である。加えて鍵となるのが、自社のデジタル化リソースの投下先を見極めることである。自社の状況を考えてみてほしい。貴重なデジタル化リソースの多くを、ノンコア事業・ノンコア業務のデジタル化へ投下してはいないだろうか。デジタル化リソースは、コア業務におけるデジタル活用にこそ投下すべきだ。ノンコアは思い切って他社に任せてしまってはどうか。自社にとってのノンコアをコア事業としている他社の方が、その領域のデジタル化は案外進んでいるものだ。その果実を自分のものにしてしまおう。

デジタルトランスフォーメーション
小さな花火を、速く、たくさん上げること。それがセルフディスラプションの鍵である。繰り返しになるが、デジタルトランスフォーメーションは、新しいビジネスモデルへの転換である。こういった取組みは計画的に進むものではない。そもそも何が当たるかわからないものである。それらの点を割り切り、「確率論」の勝負をするべきだ。デジタルインテグレーションの過程で身に付けたアジャイル型の進め方を最大限発揮して、事を進めよう。逆に言えば、この段階に至る前に、アジャイル型を阻害しない社内のガバナンスを整備しておくことが肝要である。

上記の鍵を押さえ、3つのステップを実現させる具体策を描き、自社にあったデジタル戦略を完遂させよう。

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