日本企業のデジタルトランスフォーメーションのあり方デジタルトランスフォーメーションの構成要素

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「デジタルによる事業構造の変革」である。DXに限らず、企業において大きな変革を起こす際にの重要なな視点の1つは、全体を俯瞰する鳥の目である。日本企業はDXを十分俯瞰できているのだろうか。

企業におけるDXは大きく6つの要素、すなわち「ユーザー・CX(カスタマーエクスペリエンス)」「戦略・組織」「チャネル」「オペレーション・IT」「データ基盤」「テクノロジー」から構成される。各要素について掘り下げるとともに、それらを有機的に機能させる上での要諦を見ていく。
この記事をシェア
2019.01.11

背景・課題意識

DXとは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことであるというのが、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマンが提唱した概念である。それを企業目線から解釈すれば、DXとは「デジタルによる事業構造の変革」と言える。そのDXを成し遂げるべく、日本企業は試行錯誤を続けている。しかし、多くの企業において場当たり的な施策が散見されるのが現状だ。それは何に起因するのだろうか。

大きな変革を起こす際に重要な視点は、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」と言われる。「鳥の目」とは対象を俯瞰する目、「虫の目」とは近付いて様々な角度から物事を観察する目、「魚の目」とは流れを見る目である。3つの目の全てが重要ではあるが、鳥の目なくしては海図なく走ることになり、確実に迷走してしまう。日本企業のDXにおいて、この鳥の目が十分と言い切れるだろうか。

本稿では、DXにおける鳥の目に当たる「DXの構成要素」を紐解いてみたい。

DXの構成要素

企業におけるDXは大きく6つの要素、すなわち「ユーザー・CX」「戦略・組織」「チャネル」「オペレーション・IT」「データ基盤」「テクノロジー」から構成される。これらの要素は、ビジネスモデルの構成要素とほぼ同じであり、企業DXが事業構造変革を意味することと通ずる。それぞれの要素について、もう一段深く掘り下げてみよう。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の構成要素

ユーザー・CX
ユーザーとCX(カスタマーエクスペリエンス)は、ビジネスモデルのコアを成すものであり、事業構造変革の起点である。特に、CXはデジタルを活用することで非連続的な変革を起こしうるものであり、DXの起点はCXであると言っても過言ではない。ゆえに、CXのメカニズムを解明することは、DXの大きなテーマである。しかし、メカニズムを解明できたとて、具体的なアイデアを発想できねばアクションにつながらず、アイデア発想の手法も肝要だ。
 
戦略・組織
事業構造を変革するDXは一朝一夕に成し遂げられるものではない。最終形に向けて実現性の高いステップを刻む必要があり、そのステップの設計とリソース配分こそがDX戦略だ。また、戦略を具現化する施策をいかに組織にビルトインするかも重要な論点となる。変革を迫るDX施策をやり切るには、抵抗勢力を抑え込む戦術を知っておくことが欠かせない。この戦いを進めるデジタル組織・人材のあり方はどのようなものだろうか。組織の類型とデジタル人材のあり方を知り、自社のDX戦略に適合するものを選ぶ必要がある。「組織は戦略に従う」のだ。なお、デジタルを用いた新規事業の推進に当たっては、その立ち上げ方や稼ぎ方が既存ビジネスと大きく異なることを知らねばならない。間違いを犯す企業は多い。
 
チャネル
チャネルは、戦略・組織を動かすファンクションの1つだ。デジタルにおいてチャネルというと、デジタルマーケティングに偏りがちだが、リアルとデジタルを統合的に捉える必要がある。デジタルマーケティングは当然押さえた上で、デジタルがリアル接点をどう高度化するか、高度化したリアルとデジタルをどうインテグレートするか。そこにデジタル時代のチャネルの神髄がある。
 
オペレーション・IT
もう1つのファンクションが、オペレーション・ITである。まずは、デジタル時代にオペレーション・ITが果たす新たな役割の定義が必要だ。デジタル化したオペレーション・ITは、企業内のフィードバックループの担い手となる。つまり、戦略・組織のPDCAを加速する。また、AI・IoT・RPA等によるBPR策とその立案手法、それら新テクノロジーの既存ITとの融合、施策の全社展開のあり方も主要論点だ。アジャイルの取り込みも忘れてはならない。それは開発手法だけでなく、仕事のスタイルまで包含して考えるべきである。
 
データ
データはDXを駆動させる”血液”だ。今、そのデータに注目が集まっている。まずは、なぜ今、データなのかを正しく理解する。その上で、データ産業における自社のポジショニングを明確にすべきだ。日本企業の多くは、”データ活用”に特化することが得策と考える。では、データ活用戦争をいかに生き抜くか。そのためには、そもそもデータ活用とは何をすることなのか、それを機能させるための組織はどうあるべきかを具体化する必要がある。
 
テクノロジー
テクノロジーは、CXに並ぶDXの起点の1つである。それら先進技術、およびシリコンバレーに代表される、先進技術が生み出されるテクノロジーの聖地との向き合い方を、各企業は明確にせねばならない。その上で、各テクノロジーの可能性と限界を見極め、実装の要諦を知る必要がある。
 

DXの構成要素を機能させる鍵

鍵は大きく3つある。

1つ目は、関係性の中で各要素を捉えることだ。各要素の理解が前提にはなるものの、バラバラの理解では、どこから変革の手を付けることが最も効果的・効率的か判別がつかない。各要素は深く連関し合うものであり、その関係性を整理し総合的に理解してこそ、初めて「俯瞰した」と言えるのだ。俯瞰できれば、変革のレバーを特定し、手を打つことができる。

2つ目は、CXとイネーブラから変革の起点を考えることだ。実現したいCX起点で、他の要素の目指す姿を決めていくのが原則である。一方で、そのCXの変革の要因となるもの(イネーブラ)がある。「取り巻く環境」「データ」「テクノロジー」だ。思い付きのCX変革像ではなく、イネーブラの将来を予測した上で、CX変革の仮説を描き、変革の起点とすることが肝要である。

3つ目は、構成要素を機能させる要として、データを据えることだ。データは前述の通りCXのイネーブラであると同時に、構成要素の間を「血液」として巡るものでもある。逆に言えば、データが企業内・外を巡らなければ、DXは機能しない。加えて、データもないのでPDCAも回らない。それほど重要なものでありながら、他のイネーブラと異なり、データは自社の意思でかなりの程度コントロールできる。まさに、「要」に据えるにふさわしい。

上記3つの鍵を押されば、DXの構成要素の機能促進を図ることができるはずだ。