日本企業のデジタルトランスフォーメーションのあり方日本企業にとってのデジタルトランスフォーメーションとは

デジタルが企業の競争を大きく変えようとしている。顧客の変化、異業種からの参入、猛烈なスピード、あらゆる点で従来とは全く異なる競争環境が生まれようとしている。競争環境が変われば、企業の戦略や組織、オペレーションなども変化しなくてはならない。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、新たな競争環境で勝ち抜くための事業構造の転換である。特に日本企業にとっては、これまで築いてきた競争優位性を犠牲にして変化する決断を迫られることもあるため、DXによって企業価値を向上させる適切なやり方を知っておくことが肝要だ。

当社が様々なデジタルに関するプロジェクトを通じて蓄積してきた、DXへの挑み方を提言する。
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2019.01.11

背景・課題意識

デジタルが企業の競争を大きく変えようとしている。従来のビジネスにおける競争力が、今後のビジネスにおいて優位性になるとは限らなくなった。そればかりか、足かせになることすらある。これまで時間をかけて関係を築いてきた顧客が、一夜にして離れてしまうこともまれではない。そして、昨日まで全く関係があると思っていなかった企業が、競争相手になる可能性さえある。この変化は、人類が歴史上経験してきた数々の産業の転換点にも劣らないインパクトを持ち、しかも圧倒的に速く進んでいる。
 

歴史的な産業の転換点

第一次・第二次産業革命は、エネルギーと輸送手段の革命をもたらした。それまでの小規模な企業による競争は、大量の資源を使って、広域のマーケットで事業を行う競争へと変貌した。この競争に勝ったのは、より大規模で、川上から川下までを統合し、利益を独占できる企業であった。この時代に生まれた企業は、ロックフェラー(スタンダードオイル)やフォードなどの、歴史上に類を見ない大規模企業であった。日本でもトヨタやソニーなどの巨大企業が生まれ、グローバルな競争における優位性を確立した。1980年代になると、PC、インターネットが第三次産業革命をもたらし、再び力学を変えた。マイクロソフトがOS、インテルがCPUを抑え、その他のハードウェアやアプリケーションは様々な企業がオープンに参入する水平分業の競争が生まれた。

そして今、AI、IoT、ブロックチェーンなどのデジタルテクノロジーが再び競争のルールを変えようとしている。最も大きなルールの変更は、規模が優位性にならないという点だ。これまでのビジネスでは、通信や流通などの様々なコストが参入障壁となり、規模の大きい企業に有利な競争となっていた。しかしこれらのコストは限りなくゼロに近づいている。製造コストでさえ、ファブレス化により莫大な投資が不要になった。こうした変化は特に、これまで主に製造業において垂直統合モデルの優位性を磨いてきた日本企業にとって大きな影響を持つ。これまでのビジネスの延長線上で何かを改善するというだけでは不十分だ。現行のビジネスを犠牲にするような痛みを伴いながら、新たなデジタル時代の競争で勝ち抜くことができる事業構造の転換が求められている。

DXに挑むには

DXは大胆に進める必要がある一方で、拙速に成果を求めるとうまくいかないことが、当社の経験上わかってきている。デジタル技術の導入や、デジタル組織の新設などを進める企業は数多くあるが、すぐに成果が出ないまま組織が有名無実化してしまう企業も散見される。これらの取り組みは意味ある一歩ではあるが、それだけでは事業構造の根っこは変わらない。特に規模の優位性を武器に戦ってきた企業には、これまでのビジネスの慣性が大きく働く。変化に向けた一手を十分な時間をかけて浸透させていくことが重要だ。

当社では、DXを進めるにあたって、着実に成果を生むための提言や、知見の紹介を行っている。中でも特に重要なものが、DXを段階的に進めていくコンセプトである。DXを成し遂げるまでの道中、「デジタルパッチ」、「デジタルインテグレーション」というゴールを設定し、変革に伴う痛みを最小限にとどめながら、着実な成果を出して行くやり方だ。さらに、事業構造の転換に含まれる要素を、「ユーザー・CX」「戦略・組織」「チャネル」「オペレーション・IT」「データ基盤」「テクノロジー」とし、それぞれにおいて具体的な変革の方法論について提言を行っている。

1990年代に日本の半導体産業の猛攻を受けたインテルは、事業構造を大きく転換して危機を乗り越えた。そのときの経営の舵取りを担った故アンディ・グローブ氏は、著書「Only the Paranoid Survive」で当時をこう振り返っている。「戦略転換点は、当事者にとっては苦しい時期だが、発射台から飛び出し、より高いレベルに上昇することができるチャンスでもある」

DXは、単なるデジタル化への対処ではない。デジタルで様変わりする競争を勝ち抜くための事業構造の転換だ。顧客が変わり、競合が変わり、自社の戦略も、社員も変わらなくてはならない。それを成し遂げた先には、大きなビジネスフロンティアが広がっている。