デジタルマーケティングを活かしきるにはデジマケの要となるデータ基盤の点検ポイント

 デジタル技術によって行動データを始めとした多種多様なデータの取得ができるようになり、マーケティングにおけるデータ収集・蓄積・活用の重要性はさらに高まっている。

 現在では、顧客の詳細な行動データが取得できるようになっただけではなく、機械学習、特にディープラーニングを始めとしてデータの活用用途も広がりつつある。また、外部とのエコシステムを構築する場合も増えてきた。

 一方で、これらの変革に合わせてデータ基盤を見直している企業はどのくらいいるだろうか。

 データをビジネスに活かす方法はこの数年で急増した。データサイエンティストと呼ばれる人材も増えてきた。しかし、データ基盤も見直さなければ、ビジネスを変革させることはできない。

 これからのデータ基盤に求められる要件は、
  ①とにかく幅広いデータを蓄積する
  ②適切なパフォーマンスの維持する
  ③ビジネスにダイレクトで利用できる形でアウトプットする
 の3点である。

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2018.10.09

トレンド・背景

 今後のデジタルビジネスにおいてデータ活用の重要性は説明するまでもないだろう。

 Amazon.comやNetflixなどデータを活用した華々しい事例がメディアに取り上げられる一方で、自社ではうまく活用できないという悩みを抱えている企業は多い。

 データ活用というテーマでは、データサイエンティストの採用や組織の改革などに目を向けられがちだが、その土台となるデータ基盤にも変革が求められることはあまり重視されていないように感じられる。

 顧客の属性や行動データを何の工夫もなく溜め込むだけになっていないだろうか。ディープラーニングを始めとした機械学習など、活用する側の技術の進歩によってデータ基盤に求められる要件は変化している。従来のデータ基盤はそれらの新たなニーズに対応できるだろうか。DMPやASP/SaaSなどのビジネスのエコシステム化に追いついているだろうか。

 データの収集・活用・保管を高度化する上で、これからのデータ基盤に求められる「点検」ポイントを振り返ることが重要だ。

何をすればよいのか

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成功の鍵

 データ活用を企業に浸透させるためには、前提としてデータ活用によってPDCAを継続的・自律的に回す必要がある。そして、そのためにデータ分析基盤を以下の3つのポイントで見直してみてはいかがだろうか。
  • とにかく幅広いデータを蓄積されている
  • 適切なパフォーマンスの維持されている
  • ビジネスにダイレクトで利用できる形でのアウトプットが利用できる
 最初に手をつけるべき点は、利用可能なデータの種類を点検することである。いくら優秀な分析者でもデータがなければ、分析ができない。利用可能なデータを増やすことによるメリットは大きく、昨今ではデータレイクという形でセンシングデータなどの扱いづらい非構造化データを溜め込むという形が増えてきたが、まだまだ見直す観点がある。

 例えば、ブランク(データの空白行)が多い項目を他の登録情報などから機械学習で推定することで、分析に活用するには不適格だったデータ項目を利用可能な項目とし、結果的に分析の精度を向上することができる。

 同じ理屈でサンプリングの有用性も増している。サービス利用者の一部にアンケートをとり、嗜好や年収などを聞きだし、その結果と属性や行動データを使って、全利用者分の推定をすることで、顧客の思考・生活に関するデータを準備している企業もある。

 もちろんDMPなどでサードパーティデータを利用する方法も有効だ。とにかく、色々なデータを繋げてなんとか顧客像を理解しようとする姿勢が重要である。


 また、実際の企業におけるデータの活用事例を見ていると、データ分析基盤のレスポンスの遅さがデータ分析の障壁になっているケースも多い。

 そもそも、データ分析基盤は、レスポンスが遅くなりがちである。これは、顧客が直接利用するシステムと比べて、投資効果が測りにくく投資がしづらいからだ。

 アドホック分析はトライ&エラーが基本であるため、レスポンスが遅い基盤を使うと検証負荷がダイレクトに増大し、試行錯誤をする気は起きなくなる。とあるデータサイエンティストは結果が返ってくるまでに5秒以上かかると、他のことを考えてしまい、分析の効率がガクッと落ちると言っていた。

 データサイエンティストがひとつのクエリを投げて5分も待っているケースもある。これでは、いくら優秀な人材を集めても宝の持ち腐れである。見落としがちになるがデータを活用した組織を作るためには分析結果が速く返ってくるデータ分析基盤が必須である。

 そして、そのためには、データ分析基盤のログを分析し、必要なレスポンスが出ているかを確認する運用を行う。基本だが意外と出来ている企業は少ない。そして、必要に応じてその分析結果をもって経営層を説得し、効率的な分析環境を整えるための投資を引き出す必要がある。


 ビジネスユーザー目線でのアウトプット設計も重要なポイントだ。データ分析基盤は、クロス集計やグラフ化するためのデータおよびツールを公開すればよいという時代ではなくなった。機械学習などの高度技術を活用するためには、データから意味合いを出す機能をユーザー側に求めるのではなく、一箇所に集約させる方がデータサイエンティストなどのリソースを有効活用できる。

 例えば、大手広告代理店では、マーケティングチームのプロデューサー向けに、分析用データではなくターゲット属性を見極めるための検索エンジンと広告配信ツールを提供している。これは、プロデューサーが広告配信の要望を入力するだけで、機械学習などの分析技術を意識せずに広告配信から計測までが完結する仕組みだ。

 このように、データ基盤は分析データを提供する基盤であるという概念に捉われずに、ユースケースやユーザーのニーズに合わせた形式で提供することが、データ活用を深化させる秘訣である。


 今後ビジネスにおいてデータが生み出す価値はますます加速していくのは議論の余地がないだろう。

 特に機械学習の普及を背景に、その中核を担うデータ基盤に求められるものは、ビジネスアナリストによるモニタリングから、データサイエンティストによる新しいインサイトの発見やソリューションを実現するサポートに軸足が移りつつある。

 その変化に向けた対応自体は決して難しいことではないが、データ基盤に対するこれまでの常識を変えなければならず、意思決定のハードルが高いことも事実である。

 データに対する考え方を変えることができるか。この一点が今後データを活用して成長する企業になりえるかどうかの分かれ目になるのではないだろうか。自社のデータ基盤が次の時代を迎えられるものであるかどうかを一度点検してみてはどうだろうか。