デジタルと既存ITの融合既存ITへの適用方法

 デジタル変革が目指す姿の実現に向けて、企業の歩む道筋は険しい。デジタル変革を推進するには、既存ITをデジタル化に耐えられる状態にまで変革していく必要がある。企業が将来のデジタル化に備えるためには、既存アセットの改革と外部活用の観点から出てくる5つポイントがある。

 既存アセットの改革の観点からは、
①既存ITのリノベーション:
企業の抱えるレガシーシステムをデジタル化に備えた状態に変えていく。
②全社データの統合:
データレイクやDWHの構築により、自社で散在しているデータを統合・標準化・クレンジングする。

 外部活用の観点からは、
③最新テクノロジーのナレッジ展開:
デジタル組織で調査・研究したナレッジをIT部門に展開し、既存ITへの浸透方法を検討する。経営陣や事業部門にも展開し、デジタルリテラシーを高める取り組みを行う。
④他社プラットフォームの利用:
他社から提供されているプラットフォームは積極的に活用する。
⑤パートナーシップの再考:
新しいデジタルを使った“攻めのIT“では、従来のITベンダー以外との付き合いも検討する必要がある。
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2017.11.20

トレンド・背景

 デジタル化に積極的に取り組む企業は多い。ただ、実証実験(PoC)自体が目的となっていたり、色々な技術の実験を繰り返すものの実際のビジネスへの展開がないといった例もある。例えば、よく話題に上がるAIやブロックチェーンでは、多くの企業がPoC関連のプレスリリースは発表するが、実ビジネスになかなか繋がっていない状況にある。破壊的技術と理解はできても、自社としての覚悟を決めねば本格導入には踏み切れずに停滞する可能性は高い。

 PoCまでは既存ITと切り離し、全く新しいビジネスアイデアとして進めることが出来る。しかしそれ以降の本格導入に向けては、既存ビジネスをどう変えるかという段階に入るため、既存ITに手を加えることは避けて通れない。既存ITがレガシー化していたり、属人化した運用になっているならば、準備作業から始める必要がある。

何をすればよいのか

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成功の鍵

① 既存ITのリノベーション
 企業は多くのレガシーシステムを抱えているが、その多くがデジタル変革を実現するための要素を備えていない。これからのデジタル化にはIoTとの連携や、APIエコノミーといった他サービスとの連携が必要となる。まずは自社システムをデジタル化に備えたプラットフォームに変えていく必要がある。例えばオンプレミスからクラウドへの移行などだ。

 日本はアメリカよりもデジタル化が遅れているとされているが、その理由の一つに基幹システムのあり方の違いがある。アメリカはASPのような既存製品を積極的に使う。一方で日本は、業務の要件をなるべく叶えるために自社独自のカスタマイズを繰り返したケースが多い。増築を重ねた温泉旅館のように複雑化したシステムであれば、デジタル化に向けて多くの準備作業が必要になるだろう。


② 全社データの統合
 今後のデジタル変革にはビッグデータの活用が必須であり、多くのデータを集められるプラットフォーマーが勝者になると言われている。そのためITビッグ5(アップル、アルファベット(Googleの親会社)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック)を中心に、プラットフォームの覇権争いが始まっている。

 企業としては自社で散在しているデータを一元化することから始めねばならない。データレイクやDWHの構築が盛んに取り組まれているが、社内のシステムがバラバラの状態なのであれば、必須の試みと言える。その上で、BIツールによる分析やデジタルマーケティングへの活用に繋げていきたい。


③ 最新テクノロジーのナレッジ展開
 デジタル組織を中心に最新テクノロジーの調査・研究を進めるが、IT部門にも実証実験(PoC)の段階から介入してもらい、自社のシステムとの相性を見極めながら進める。PoCに参画したメンバーは、蓄えたナレッジを適宜IT部門に展開することもミッションとなる。既存ITにいかに最新テクノロジーを浸透させていくか、IT部門が当事者意識を持って積極的に検討するような体制を築きたい。

 経営陣や事業部門にナレッジを共有していく取り組みも重要だ。ITリテラシーが低い場合、テクノロジーへの理解も得難い可能性がある。「何が凄いの?これまでのテクノロジーと何が違うかわからない」と反応されると、イノベーションへの取り組みがストップしかねない。定期的にデジタルリテラシーを高める研修や勉強会を開催し、ナレッジを社内に普及させておく必要がある。


④ 他社プラットフォームの利用
 自社だけで新サービスを開発・管理するのではなく、他社から提供されているプラットフォームもまた積極的に取り入れるべきである。昨今では全て自前でIT投資を行うよりも、プラットフォームを活用する方が迅速、安価で高品質のIT環境を構築できるようになってもいる。他社が真似できないような高い技術を追求するよりも、他社と共存共栄した方がメリットが大きいことも多い。

 AIエンジンを自社で開発するのは膨大なコストが発生するが、例えばGoogleのプラットフォームを使えば画像認識や音声認識のAIを即座に組み込める。膨大な教師データによって学習されている点も重要だ。これからの企業はICT企業が提供する大規模プラットフォームを利活用するか、対抗して自前で作成するかの決断を迫られる。だが、よほどの覚悟や勝算が無い限りは、利活用を優先した方が得策であろう。


⑤ パートナーシップの再考
 基幹システムを従来の技術で保守・運用してきたこれまでとは、やり方が大きく変わる。新しいデジタルを使った“攻めのIT“になると、最新テクノロジーに対する知見や実績、既存の業務に囚われないゼロベースでの要件検討、リスクを恐れずにチャレンジする風土が求められる。これまで任せてきたITベンダーに”攻めのIT“まで任せられるケーパビリティがあれば良いが、そうでない場合は付き合い方を見直した方が良い。

 オープン・イノベーションを意識した他社との提携や、ベンチャー企業の買収についての検討も必要となるだろう。検討の結果、新たなパートナーとの付き合いが始まるかもしれないと念頭に置いておいた方が良い。