デジタル時代に問われる組織・人材の行末海外からの人材を受けとめられるか

 日本企業での多様な人材の受け入れに向けて、「日本人だけでは発想に限界がある」という考えが広まりつつある。そこで、積極的に外国人の本社採用を増やす日本企業も出てきている。アジア諸国において日本企業に対する人気は低くない一方で、日本企業は外国人採用に際していくつかの前提を置いてしまう。その最たるものが、採用者が日本語をできることを前提としてしまうことだ。優秀な人材を採用した後、企業で日本語教育をしようとする発想も少ない。

 日本企業で働く外国人社員は、スキルやマインドセットよりも日本語能力の方を高く評価されているようにも思える。そうした状況が、日本企業が外国人を採用する際の足かせになっている。高等教育を受けて外国人の採用では、米国や英国に大きく差をつけられている。

 重要なのは、ポテンシャルのある外国人を採用した後だ。しっかりと育成をして、活躍の場を与えられるかどうかが問われる。住む世界の異なる住人が一緒の食卓を囲む未来が目の前に来ているにも関わらず、企業としてキャリアパスやロールモデルを提示しきれていないことも多い。企業側での取り組み体制が問われている。
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2017.12.05

トレンド・背景

 筆者が関与してきた10以上のクライアント先で「日本人だけでは発想に限界がある」と考えて外国人の採用が増えつつある。厚生労働省の「外国人雇用状況」の2016年10月統計によると、外国人労働者数は約108万人と前年の約91万人に比べ19%の増加で、過去最高を更新し続けている。(*1)ちなみに2年前は約79万人で15%の増加を記録しており、日本での外国人就職熱が年々高まっているのは間違いない。さらに、雇用する企業も約17万ヵ所と13%増加で記録を更新している。専門的・技術的分野の在留資格者の数も20万人を超え、18.5%増と、その前年の調査結果の13.5%に比べ、著しく伸びている。

 その中でも注目のIT人材はここ3年で急激に伸びていて、年平均成長率(CAGR)が11%以上と二桁成長だ。そのうち約8割は東京に集中している。主に中国、韓国、アメリカ、さらにフィリピンといった国々のIT人材が集まっている。雇用事業は製造や電気産業が中心だが、小売りやサービスも伸びてきている。海外ビジネスを展開するグローバル日本企業にいたっては外国人採用を行っている企業が約50%程度であり、このトレンドは益々加速すると見られている。(*2)


(*1) http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11655000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu-Gaikokujinkoyoutaisakuka/6424474.pdf
(*2) JETRO「2015年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(P38:日本貿易振興機構)

何をすればよいのか

成功の鍵

 アジア諸国において、日本企業に対する人気は低くない。高度成長を果たしたかつての日本に対する尊敬、信頼、そして憧れは根強い。2013年に実施された「外国人従業員数ランキング」によると、外国人採用で台頭するトップ10企業にランクインしたのは、みずほフィナンシャルグループ、イオン、山喜(紳士ビジネス・ワイシャツメーカー)、トヨタ自動車、東芝、ソニー、楽天、等である。楽天やシャープでは、ご存知の通り英語でメッセージをやりとりしている。楽天は、2014年に開発チームの採用者の約8割を外国籍としており、優秀な海外人材を採用する積極性が見て取れる。(*3)トップ10には入らなかったが、野村HDの外国人の管理職の数は158人で、全管理職の4,000人以上の約4%弱を占める高い割合になっている。(*4)

 一方で、日本企業は、外国人採用に際して日本語ができることを前提としてしまう。経済産業省が行う「日本企業における外国人留学生の就業促進に関する調査研究」の2014年レポートによると、採用のポイントとして最も多くの企業が「日本語能力」を挙げている(回答では日本語能力が不十分と答えている)。(*5)

 日本語の能力としても、相当高度なレベルを期待している。170社を対象とした企業アンケートでは、60%以上の企業が幅広いビジネスの場面での適切なコミュニケーション能力を期待していると回答しているのに対し、外国人留学生の37%しかそれに該当する自己評価をつけていない。つまり、語学だけでみると留学生のレベルは不十分ということになる。

 外国人採用に関して、海外の主要国と比較すると日本はまだまだキャッチアップが足りない。2016年の別の経済産業省のレポートによると「高等教育修了者の流入人口の推移(対人口比)」の割合が圧倒的に低く、人口の4~6%が外国人の米国や英国に比べ、日本は1%未満である。(*6)

 優秀な人材を採用した後、企業で日本語教育をしようとする発想も少ない。コンサルティング業務でクライアントの海外拠点と直接仕事をしていると、支店における日本人部長の「語学対応」に現地の従業員が追われている姿が目につく。中国におけるとあるクライント先での些細なレポートにしても、日本語の翻訳が必ず必要になり、日本人(現地採用を除く)部隊は中国語や英語を駆使して業務やコミュニケーションをしようとする意欲もなく、日本語の教育を外国人社員に行う意欲もまったくなかった。そうなってくると、一番損をするのは当人であるがそれになかなか気づけていない。日本企業に働く多くの外国人社員は、スキルやマインドセットといった能力よりも、「日本語」の言語能力のほうが高く評価されているようにも思える。「あいつが言っていることはよく分かる」とよく耳にしたが、それはあくまでも、「あいつが言っている日本語はわかりやすい」という現象であって、残念なことにビジネスセンスやビジネスマンとしての力量・能力ではなくなっている。

 さらに重要なのは、採用した後に、活躍の場を与えられるかどうかだ。先の企業アンケートによると留学生採用の課題として「キャリアパスや社内のロールモデルをうまく説明できない」が全回答者数の40%以上と、最も多かった。多くの企業にとって採用した外国人のキャリアを促進する方法がわからなくなってきている。(*7)

 外国人は特に自分のキャリアパスについて真剣に考える人が多い。それは日本人の滅私奉公とは異なる発想で、常に自分にとってと会社にとっての相互利益を考える思考からできている。

 2017年になり、外国人採用が爆発的に伸び始めている。筆者が経験を通して感じているのは、日本企業の人気は決して低くない。アジア諸国において、その日本ブランドは日本の企業の魅力に加え、国が誇る文化や特徴が後押しをしてくれている。この礎を日本企業はさらに積極的に活用していくべきだ。

 一方で、日本企業は、外国人採用に際して日本語ができることを前提とし、優秀な人材やビジネスの躍進を担ってくれる未来の人材やリーダー採用機会を逸している。更に柔軟な思考を取り入れた今後の人材戦略が求められている。


(*3) https://www.rarejob.com/englishlab/column/20161105/
(*4) 野村HDは外資企業の買収などもあり、必ずしも外国人採用の徹底戦略でできている数字ではないと筆者は憶測する。
    参考:http://toyokeizai.net/articles/-/17954?page=2
(*5) http://www.kanken.or.jp/bjt/survey_reports/data/survey_reports_report01.pdf
(*6) http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2016/pdf/2016_02-01-02.pdf
(*7) http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/global/pdf/H26_ryugakusei_report.pdf