デジタル時代に問われる組織・人材の行末コントロールできない多様人材

 新しいことやろうとすると、多様な人材の意見を取り入れた方が上手くいく。だが、均質的な組織を作ってきた企業風土で、それを達成することは難しい。これまで均質化を求めてきた組織文化の中で、いくら上位職が求めても、現場担当者や部下が新しいアイデアを発言するのは難しい。そもそも新しいアイデアを考えて、発表するように指導・教育されてきていないのだ。

 多様性を受け入れるためには、まず幅広い考えを受け入れる「寛容力」の受け皿が必要になる。次に、自分と違った意見や分からないことにも理解を示す「共感力」が求められる。そのためには、「もしも、言っていることが正しければ、こうなるだろう」という「想像力」を更に鍛えることが重要になる。そして、最終的には新しい世界に変革をもたらすために素早い「適応力」が肝心になる。重要なのは、まずあらゆるアイデアにいったん耳を傾けるということだ。
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2017.11.20

トレンド・背景

 現代の企業経営において、人材の多様化は必須の項目となっている。グローバリゼーションの進展、それによる異なる価値観との同居、そしてデジタルへの許容など人々に期待される柔軟度(オープン度合)の要素は拡大している。

 2016年9月のハーバードビジネスレビューの記事によると、多様性が重要かつ大きな決め手とされており、「先天的な人種や性別、後天的な経験、文化的背景すべてがビジネスの成功の鍵を握る」という 。(*1) 同じ記事ではまた、2016年に実施した91か国の20,000社以上を含む調査分析で、「女性を上位職・管理職に置いている組織のほうがより高い利益を出している」と発表している。2011年に実施された調査でも、より多様な経験や文化的背景を持ち合わせたマネージメント・チームのほうが革新的な商品をより多く市場に出していることが判明した。

 企業がデジタル組織を作るためには、まず従来の組織の多様性(ダイバーシティ)の度合をチェックする必要がある。チェックを終えた後、ただちに多様性を養うためには、組織がトップダウンで取り組む必要がある。その要点をいくつか抑えた。


(*1)“Diverse Teams Feel less comfortable –and That’s Why They Perform Better,” Harvard Business Review article. September 22, 2016

何をすればよいのか

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成功の鍵

 多様性を受入れるためには、組織に4つの力が求められる。まず幅広い考えを受け入れる 1)「寛容力」 の受け皿が必要になる。次に自分と違った意見や分からないことでも理解を示す 2)「共感力」 が求められる。そのためには、「もしも、言っていることが正しければ、こうなるだろう」という 3)「想像力」 を更に鍛えることが重要になる。そして、最終的には新しい世界に変革をもたらすために素早い 4)「適応力」 が肝心になる。

1)「寛容力」
「寛容力」とは、偏見を捨てること。自分の物差しでは計れない世界があることを、常に頭の片隅に入れておくことだ。多様なメンバーがどう違うのか(多様なのか)を判断する時、人は5つの要素を見ると言われている。①人の見方、②行動の仕方、③話し方、④考え方、⑤感じ方だ。その要素が自分とかけ離れていたとしても、まずそれを受け入れることのだ。
   
2)「共感力」
「共感力」とは、自分の思いつかなかった意見、反対する考え方に対しての理解を示すことだ。人は自然と似ているもの同士で惹かれあうが、この場合の共感力はその意味ではない。「あえて、わからないことに対して共感してみる」ことである。そのためには想像力が重要になる。

3)「想像力」
「想像力」とはそのアイデアがもし実現したら、もし本当だったらどうなるのか、を一所懸命に考えることだ。大げさな話になるが、200万年前に人類は直立し、前頭葉が発達し始め、進化が加速し、その結果、人類は想像力という掛け替えのない能力を手に入れた。問題解決、突発思考、動機づけ、的確な判断、など様々なことができるようになった。多様性とは想像力の筋肉を鍛えることでもある。

4)「適応力」
「適応力」とは実現した世界をいち早く取り込みにいくことだ。適応することは人が生き抜く上で最も重要なことの一つである。そのため、多様性を実現する最後のカーソルとなる。グループの調和(均質性)を目指そうとすると通常の人は隔たりや相違をごまかそうとする。ごまかしたほうがうまくいくと直観的に思うからだ。しかし、数々の多様性を支持する研究報告によると、実際にはこの違いを真剣に受け止めることが近道なのだという。その一例として、米国のヘルスケア企業で実施された2009年の調査がある。これによれば、従業員が人種と民族の違いを祝い、差別を蔑む、行動や言動に出れば出るほどその会社に働いていた少数派が自由を感じ、やる気を出すことができたのだという 。(*2)

 以上の4つの要素に共通して重要なのは、まずあらゆるアイデアにいったん耳を傾けるということだ。それが多様性をコントロールするカギとなる。そのアイデアがどんなにクレイジーで不可思議な発言でも、もしそうであったらどうなるのだろう?と考えること。更にいうと、新しいアイデアがしっくりきた時にはもしかすると時すでに遅しなのではと危機感を持つことである。
 
 例えば、何かの現象が大々的に流行雑誌に掲載された時には注意を払う必要がある。90年代半ば、アマゾンの創設者ジェフ・ベゾス氏は10年後には人々が今デパートやスーパーで買い物をするように、今後オンライン上で何も考えずに物を買う未来が来ると断言し、当初赤字続きのアマゾンとその投資家たちを再三説得した。その際にベゾス氏が以下のような発言をしたのを記憶している:「未来は作るもの、予想するものではない。作れば予想したことになる」。彼が提唱していた世界は、使いやすいスマートフォンの到来で更に加速され、現実となった。この信じられない、馬鹿げたアイデアに当初耳を傾けた人たちだけが、今我々が生きている未来を作り、いまなお変革を起こしている。

 企業は人である。だからこそ企業風土もビジネスモデルも変化することに躊躇する。以前は産業がサイロ化されていて柔軟に行き来できなかったので、自社の土壌に土足でズカズカと入り込んでくるプレイヤーが予測でき、すぐさま対処ができた。しかし、今は違う。時計業界にアップルを始めとするデジタルデバイスのメーカーが、映画業界にアマゾンやアリババなどのECプラットフォームが、自動車業界に多くのIT大企業が、ステルスモードで割り込んでくる。クリエイティブが必要な世界から、巨額な資本を要するビジネスまで、影響範囲は広い。


(*2)“Diverse Teams Feel less comfortable –and That’s Why They Perform Better,” Harvard Business Review article. September 22, 2016